内外ニュース懇談会 講演要約
講演
「2019年 日本の進路と誇りある国づくり」
ジャーナリスト、国家基本問題研究所理事長
櫻井 よしこ 氏
内外ニュース東京懇談会1月例会は16日、ザ・キャピトルホテル東急で行われた。「2019年 日本の進路と誇りある国づくり」と題し、櫻井よしこ氏が日本が直面する危機、とりわけ韓国、中国、アメリカとの関係について新春懇談会らしく力強く問題提議をした。
日韓関係を根本から見直すべき
今、日本はものすごい危機に直面している。国の在り方を考えると、液状化現象のようなものを感じることがある。しかしそれは立て直しのチャンスでもある。私達がこの祖国を立て直せるかは、一つはどれだけ状況が厳しいかを、認識する能力があるかどうかだ。もう一つは反対されてもいいから、きちんと主張すること、戦うことである。
日本が直面する危機は、国内では電力、少子高齢化、教育など大変な問題も多いが、外国との問題にも直面している。
まずは足元の朝鮮半島問題で、今、韓国で起きていることは、尋常ならざることである。事実上、大韓民国がなくなることを前提に、私達は外交を考えていかなければならないのではないか。
韓国大統領の文在寅(ムン・ジェイン)は弁護士出身で、北朝鮮の金日成の思想を信じていると言われ、選挙の公約が、日本と関係する全てが弊害であるという「積弊」の除去だ。
また、韓国のメディアも、かなり北朝鮮勢力に席捲されている。メディアが中心になって、朴槿恵の悪事を暴き立て、彼女は32年間の刑が確定し、今、獄中にある。しかし、彼女の悪事の証拠として出されたタブレットPCの中のメッセージが、全て偽物だったことがわかったが、韓国のメディアはこれを報道しない。
文在寅がつくった司法制度にも問題がある。最高裁長官の金命洙(キム・ミョンス)という人は、最高裁の判事をどんどん変えていき、今、最高裁は左翼判事が大勢を占める。
この最高裁は朝鮮人戦時労働者問題、いわゆる徴用工問題について、とんでもない判決を出した。それは日本の朝鮮統治が、朝鮮の公序良俗に反し、違法だとするものだ。徴用した人々、募集で応じた労働者に、もし未払の賃金があったとしも、それは日韓請求権協定で終わっているが、韓国の最高裁が言うのは、「日本人は朝鮮半島の公序良俗を侵し、極めて非人道的な国際法に違反する統治の下で行われたことに対し、慰謝料を請求する」という論理だ。しかし、このような論理を使えば、何でも慰謝料の対象になるであろう。
このように韓国は政治もメディアも司法も、左翼に乗っ取られている。最後の砦は軍部だけで、日本の自衛隊やアメリカとの関係もいいと言われてきた。しかし私は、もしかしたら軍の中にも、北朝鮮の影響が強く働く状況になったのではという憶測をしている。そうなると日韓関係を根本から見直さなければいけない状況になると思う。
今の韓国の政権は、日韓関係でも米韓関係でもなく、むしろ南北朝鮮と、その後ろにいる中国に寄りかかっているのだということを、頭に入れておかなければならないだろう。
ポリティカル・コレクトネスに挑戦するトランプ
もっと大きな変化をもたらしているのがアメリカである。今、中国とせめぎ合っているが、この2つの国がどうなるかを、よく考えておかなければいけない。
2017年12月に出されたアメリカの戦略報告を見ると、核戦略の見直しなど、ブッシュやオバマの時とは、トランプ政権は根本的に違ってきたと感じる。トランプはその中ではっきりと、一番の脅威はテロではなく、中国であり、ロシアであると言う。
では中国とロシアのどちらかより深刻な脅威かというと、アメリカは中国こそが脅威であるというところに、今、立っている。
また、非常にこの頃気になるのが、アメリカの国民のまだ4割の人々がトランプを支持していることだ。日本でCNNやBBCのニュースを見ていると、トランプはいつ弾劾されてもおかしくないという気持ちにさせられる。
しかし、1月10日のウォールストリートジャーナルの保守派の論客ダニエル・ヘニンガーがコラムの中で、ミット・ロムニー(ユタ州選出合衆国上院議員、2012年大統領選挙共和党指名候補)は2020年の大統領選で全くトランプには勝てないだろうと書いた。その理由として、彼はトランプがアメリカの価値観に挑戦していることを、アメリカの国民は理解しているからだという。
その価値観とは、すごく簡単に言えば、ポリティカル・コレクトネス、政治的に正しいこと。例えば戦争はだめで平和がいい、差別はいけないといった、誰も反対することができないことに対しての疑問を、アメリカ国民は持ち始めたのだと言うのである。ヘニンガーはこの物言えぬ大衆が、自分の思いを表現する場として、たった一つ残されているのが、大統領を選ぶ権利、つまり大統領選だと書いている。
また、アメリカの中東での影響力も低下し、中東に大きな揺らぎが起きている。これはヨーロッパにも当然大きな影響を及ぼす。その背景には、イラクを攻撃し、アフガニスタンに駐留して、いろいろやってみたが、全然民主化は進んでいないことに対し、アメリカ人はうんざりしているのではないかということがあると思う。
もう一つは、アメリカはシェルオイルやガスで、今や世界最大のエネルギー産出国になり、もう中東に頼る必要がないとい。だから、中東に対する生存のための関心度が、かなり落ちてきたのではないか。
このようなことから、トランプは「中東のことはそっちに任せるから、我々は手を引くよ」ということがあるのだろうなと思う。
そうした時、中東情勢がガラッと変わり、そこにおける力関係も変わってしまう。これを非常に喜んでいるのがロシア、シリア、トルコで、中国も入る。
中国はアメリカを抜いて、世界一の大国になれるか?!
では中国は一体何を目指しているのか。それはアメリカを退け、世界一の強国として、自分たちが世界のスーパーパワーになることであろう。
2017年10月の共産党大会で習近平が言ったことは、簡単に言えば、2035年までに中国はアメリカを追い越し、世界最大規模の経済大国になる。その経済力を活用して、陸海空、宇宙、サイバーの分野に莫大に投資をし、人材もつぎ込み、中国はアメリカを抜いて、世界最大の軍事大国になる。2049年の建国100年までにそれを成し遂げ、その時に中国は世界の諸民族の上にそびえ立つと言っている。
今まで私達は、中国の世界制覇を狙う試みを、例えば一帯一路というような形で、さんざん議論してきた。中国から西に向け、中央アジアを通りロシア、あるいはアフリカを通りヨーロッパまで行くというもの。
しかし今気づくことは、この一帯一路はとっくの昔に、東に向かっても進んでいる。第一列島線、第二列島線を越えて、今はもう第三列島線のほうまで、中国は手を伸ばそうとしており、中国は全世界に網を張りめぐらしている。
ただ、これは必ずしもうまくいっていない。スリランカの事例を見ても、みんなが警戒するようになった。それでも私達が注目をしなければならないのは、うまくいっていないのは確かだが、中国はそれなりに拠点を築いているということだ。築いてしまった拠点を、今、誰が取り上げることができるのか。
一方で中国は非常に深刻な人口問題を抱えている。今の中国の人口は約13億8000万人で、やがて14億人になる。その後急速に減り始め、今世紀の終わりにはなんと6億人に減ると言われている。
急速な人口減少が起き、経済が縮小していく時に、今世紀後半、中国とアメリカの関係はどうなるか。アメリカは3.2億人から今世紀末に4.8億人になると言われている。白人がすごく少なくなり、ヒスパニックが多くなるが、多くの人たちが高い教育を受けてそれなりの仕事をする。このアメリカの4.8億人と、中国の6億人、この両者が競い合って、どちらが良い成績を出すかといえば、私はアメリカだろうと思う。
こうしてみると、中長期的に、少なくとも今世紀の終わりまでの米中関係を見ると、アメリカが中国に敗れることはないのではないか。
日本が世界で地位を固めるには軍事力が必要
アメリカや中国がそのような道を歩んでいる時に、私達の国はどうすべきか。
まずは日本とロシアの関係を見ると、かつての日ソで例をとれば、河野一郎さんとフルシチョフが交渉した時に、日本はものすごく弱い国で、シベリアに抑留されていた幾万の日本兵をとにかく帰国させなければならず、わが国はその時にロシアに屈した。
今もロシアにやられそうになっているのは、一にも二にも日本に軍事力がないことが、大きな要素だろうと私は思う。軍事力を使うことも、軍事力を認めない国が、どうやってまともな交渉をすることができるのか。
私達が今すべきことは、普通の民主主義の国に立ち戻る、大人としての判断ができる国になることだと思う。日本がアメリカとも異なる、中国とは全然違う、民主主義の国として、良識のある国として、とりわけアジアで、できたら世界で地位を固めていくには、軍事力が必要だ。
こんなに世界が厳しく、足元の朝鮮半島が北の勢力に席捲されてしまい、その後ろに中国がつくかもしれない。大韓民国がなくなり、私達はもろに社会主義、一党独裁体制のファシストの国に直面しなければならない状況が来ていることを認識すれば、もう少し準備を整えようという気になるのでないか。
最後に言いたいのは、衆議院も参議院も、全ての政党の政治家に言えることが、民主主義の根幹である国民を信頼していない。国民が決めることになっている憲法改正を、なぜ国民に提示しないのか。国民にこのような改正案でどうかと問題提議するところまでが、国会の権限である。それを私達が受け止め、良い悪いを決めるのが、我々の主権そのものである。
朝鮮半島の有事に備えるためにも、アメリカと中国の動向を見ていても、一日も早く憲法改正をし、日本自身の力を強めていくしかないだろう。しかしそう思っても、国会はなかなか動かない。これを動かすのは皆さま方のリーダーシップである。私も一緒に頑張るので、皆さまも政治家に「これでは日本がなくなりますよ」と言っていってほしい。
※講演全文は月刊『世界と日本』1297号に収録されます。また、要約は週刊「世界と日本」NO.2143号に掲載されます。
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