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内外ニュース懇談会 講演要約

講演「いま、何を議論すべきなのか ―エネルギー政策と温暖化政策の再検討」

21世紀政策研究所 研究主幹 澤 昭裕 氏

2013年3月に開催した東京懇談会で「いま、何を議論すべきなのか―エネルギー政策と温暖化政策の再検討」と題して講演。好評を博した。


《澤昭裕氏講演のポイント》

(1)鳩山総理がCO₂の25%削減と言い、そのため原子力を50%まで増やす計画となった。逆に、原発ゼロを言うとき、再生可能エネルギーで埋めるとして、非常に高い電気を補助金付きで作るという、国民の負担も増える政策となってしまった。ところで、安定供給の責任は誰が取るのか。これは電力の自由化の問題と相反してくる。
今後、短期には原発再稼働と電気料金、中長期には、エネルギー政策と原子力の事業体制が問題になってくる。


(2)自民党政権になって「規制委が安全と判断したものは再稼働する」と茂木経産大臣も、他の大臣も言っている。
規制委が安全と判断するのは、7月以降になる。夏の供給は大丈夫か。去年、関西で計画停電があるかもしれないというだけで、対応の人件費や対策費がバカにならなかった。


(3)中長期では、たぶん温暖化会議(COP19)で25%を取り下げることになりそうだ。原子力はどうするのかも関係してくる。
ところが、原子力維持について、政治の意思があやふやになってきている。原子力を日本の国力、国益、地域振興にとって、特別に必要だと思っているのかどうかが問われてくる。


(4)原子力損害賠償法でも、国と民間、政府と電力会社がどちらがどれだけのリスクを分担するか、あるいは意図、コミットがあるかを考えていくとき、制度をいじるだけでは、あまり意味がない。
大げさに言うと“魂”の問題となる。原子力発電をどこまで本気でやる人がいるのか。


(5)「確実なファイナンス」も、非常に重要になってくる。今までは発送電が一貫だった。電力債も会社全体を担保に出せば募集でき、かつ総括原価主義もあって、長期の莫大なファイナンスが可能となってきた。アメリカでスリーマイル事故後、新設が1基もなかったのはファイナンスがつかなったことが一番の問題だった。


(6)原発は最先端のイメージがあるが、安全第一で来たから、リスクのかかるチャレンジをしていない。50年たって、廃炉1サイクルが、まだ回っていない技術である。


(7)原子力行政の信頼性を失った1つとして、民主党政権が法的な根拠のないことや、やりすぎたこともある。管総理が「ちょっと停めて」といったレベルで浜岡原発を停めた。本来、行政処分して、訴訟できる形でないと安定性がない。処分の根拠とか、評価とかをやっての上なら、手続きがしっかりしてくる。たぶん、アメリカだったら、法律で禁止されていないのに、得るべき利益を垂れ流したと、株主訴訟が起こったはず。今後は法的手続きの尊重、プロセス、あるいは文書による見解表明の徹底等が必要だ。


(8)規制委の規制基準や安全基準、あるいは規制活動はどういう意味を持つのか。事業所側は、国の安全基準が必要かつ十分条件である。とみなしてきた。これは原子力損害賠償法(原賠法)にも関係する。国が決めている安全基準を守っていて、事故が起こったとして、どうして自分たちが悪いのかとなる。そうであっても、原賠法では、全部無限責任を負わされる。


(9)では、国の安全基準って何なのだとなる。中長期的には、原発賠償法を、改定していかなければならない。もうそろそろ待ったなしで、賠償スキームの問題がある。被害者に対して、賠償の矢面に立っているのは、東京電力だけだ。被害者と政府は遠い位置関係にある。


(10)東電は、廃炉と普通の賠償で10兆円ぐらいになる。総括原価主義で利益が出ていた時代でも、 経常利益は2000億から3000億しか出ていない。利益を全部賠償金に充てても、50年かかる。柏崎刈羽原発が動くか、電気料金を上げるかを前提にしないと、たぶん金融機関が、次にニューマネーを突っ込むことは、非常に大きなリスクを伴う。


(11)被害者に対して、国は直接的には責任は負わない、電力事業者が倒産しては困る、間接的に援助する、という法律構成になっている。事業者側に、無限責任を負わせているのは大変だから、有限責任にすべきだとすると、国がカバーを増やさなければいけなくなる。


(12)また、原子力技術並びに人材は国益地域振興、あるいは国力にとって絶対に必要と、初めて原子力損害賠償法で、もっと国も関与すべきだ、という結論になる。ところが、原子力に対する情熱が薄れ始めている中で、それが果たしてできるのか。


(13)原子力を動かせば、時間当たりキロワットは5~6円から4~5円だ。その可能性をやめておいて、エネルギーのフィードインタリフ(FIT・固定価格買取制度)をとった。最初に42円で入った事業者はずっと42円。20年間価格は保障されている。次の年の買取が40円になると、それで、また20年間だ。
よくドイツを見倣えというが、そのドイツでFITをやめようとしている制度なのだ。

 

【参考情報】
原子力損害賠償法
 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36HO147.html
浜岡原発
 中部電力ホームページ http://www.chuden.co.jp/energy/hamaoka/
規制委の規制基準や安全基準、あるいは規制活動
 原子力規制委員会ホームページ http://www.nsr.go.jp/
賠償スキーム
 東京電力ホームページ  http://www.tepco.co.jp/comp/
柏崎刈羽原発
 東京電力ホームページ  http://www.tepco.co.jp/nu/kk-np/


※全文は月刊『世界と日本』に収録されます。また、要約は週刊「世界と日本」1995号に掲載されています。

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