内外ニュース懇談会 講演要約
講演「『日本を取り戻す』―政治の現状と課題」
自由民主党幹事長 石破 茂 氏
2013年9月に開催した東京懇談会で「『日本を取り戻す』―政治の現状と課題」と題して講演し、今後の国政の課題について熱弁をふるった。
《石破 茂氏講演のポイント》
[オリンピック]
56年ぶりに、東京にオリンピックが来ることになった。前回は1964年(昭和39年)。私は小学2年生だった。そのオリンピックは、戦争に敗れて廃墟となっていた日本が、再び立ち上がり、高度経済成長を遂げていく契機となった。今度は、長い間の経済低迷から脱し、あるいは大震災、大津波、原発事故から再び立ち直り、全く新しい日本を、この7年間で作り上げる契機としていかなければならない。
[政権への復帰]
私どもは4年前に政権を失った。でも思いのほか早く政権に戻った。その要因だが、民主党があまりにもひどかったこともある。2つ目は谷垣さん、あるいは安倍(晋三)さんという良きリーダーを得たこと。3つ目は、中央でこそ野党だったが地方議会ではほとんどが第一党。地方組織が健在であったことである。でも、安倍総理がよく言うように「国民は、全幅の支持を自民党に与えたわけではなく」、だからこそ、常に謙虚に誠実に丁寧に正直に、政権を運営してまいりたい。
[憲法]
ほかの国の憲法にあって、わが国の憲法に欠落しているものが2つある。1つは軍隊の規定であり、もう1つは非常事態の規定だ。独立が脅かされたときに、国民の権利や自由を保障してくれる国家を存続させるため、ごく一時的に、その目的に限って、国民の権利を制限することが、非常事態の規定である。独立が脅かされたときに、国民の権利や自由を保障してくれる国家を存続させるため、ごく一時的に、その目的に限って、国民の権利を制限することが、非常事態の規定である。また、わが国では軍隊の規定が、憲法のどこを探しても書かれていない。陸上自衛隊。海上自衛隊、航空自衛隊も、外に出れば軍隊だが、国内では軍隊ではない。 国民1人ひとりが持っている自由が、不当に侵されたとき、その自由を保障してくれるのは、国家そのものである。しかしながら、その国家そのものが存立が危うくなったとき、みんなが、それぞれ自分の権利を目いっぱい主張した場合、国家の存立が危うくなる場合がある。そのとき一時的に権利を制約することは、ほかの国では当たり前のことだ。日本国憲法ができたとき、日本国は独立していなかった。独立していない国に、独立国に必要な規定は必要ないとなる。だから日本国憲法に、それら規定が欠けている。
[集団的自衛権]
集団的自衛権は、憲法を改正しなくても、“行使できる”というのが、私の考えだ。たとえば、国連憲章では個別的自衛権も、集団的自衛権も書いてあり、なぜ日本だけがこの集団的自衛権を行使してはいけないのか。もし、“国連中心主義”というのであれば、その憲章どおりに、わが国も対応して行かなければならない。アメリカとの関係を考えたとき、日本がやられたらアメリカは必ず助けにくる。アメリカがやられたら、日本は何もできない、代わりに国土を米軍基地として提供する義務を負うから勘弁して、というのが日米同盟である。どんなに小さな国であれ、主権国家同士なら、条約で負う義務も対等のはずだ。
[日米安保条約]
アメリカの国防予算は、強制的に削られている。合衆国の力は相対的に落ち、中国の力は間違いなく相対的に上がって行く。力の真空ができれば、必ずどこかが入ってくる。 アメリカがベトナム戦争に敗れ、ベトナムから撤退したとき、中国は、ベトナムが領有権を主張していた南沙群島に入り込んだ。フィリピンのスービックから合衆国の海軍が基地を撤収したときも、フィリピンが領有を主張していた西沙群島に、中国は入って行った。尖閣をめぐって、わが国と中国との主張が違う。尖閣周辺に力の空白はないのか、法の空白はないのか、常に点検する努力を怠ってはならない。領空侵犯に対して、自衛隊が出動する規定がある。領海侵犯に対しては、海上自衛隊が出動する規定が自衛隊法上ない。最初に海上保安庁が対処し、その後、海上自衛隊が対処することになっている。海上保安庁の船は空から来る勢力、あるいは海中から来る勢力に対して、対応する能力を持っていない。どの国も、自分の国の利益しか考えていない。隙があれば、必ずつけ込まれる。
[国会運営]
今朝ほど、初めて私と公明党の井上(義久)幹事長、新しく就任された民主党の大畠(章宏)幹事長の3人で会合を持った。そこで一致したのは、どっちが与党であれ、野党であれ、同じ国会議員として、国民にきちんとした答えを出す国会運営をして行かねばならない、ということである。たとえば、安倍総理は積極的に精力的に外遊して、大きな成果を得ているが、一昨年(平成23)、このときは菅(直人)総理だったか。その年、日本の総理大臣は国会に何日出席したか。127日である。フランスの総理大臣は年間に12日で、イギリスは36日、ドイツは11日だという。 日本では、総理大臣をこれだけ国会で拘束して、常に答弁を求める。それが、本当に国益なのか。日本の財務大臣は、同じ時期に国会に207日出席し、イギリスは17日。外務大臣でいえば日本が165日、イギリスは22日である。外務大臣は、国会で答弁するだけが、仕事ではない。国家の責務を担い、本当に毎日のように外国の首脳と会談をし、国益を実現するのが、第一義的な任務である。民主党も政府を構成し、与党であった。だとするならば、われわれ議会と政府との関係はいかにあるべきか、国会はどのように運営すべきかに答えを出して行かねばならない。総理や閣僚がしょっちゅう替わるのは、決していいことではない。今後、私どもとしても、国政に微力を尽くしてまいりたいと思っている。ありがとうございました。
※全文は月刊『世界と日本』に収録されます。また、要約は週刊「世界と日本」に掲載されています。
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