内外ニュース懇談会 講演要約
講演
今後の政治課題、地方創生の課題と展望
衆議院議員・国務大臣
地方創生・国家戦略特別区域担当
石破 茂 氏
2015年10月19日、内外ニュース東京懇談会の10月定例会がザ・キャピトルホテル東急にて行われた。今回の講師は4月に引き続き、国務大臣、地方創生・国家戦略特別区域担当の石破茂氏。第三次安倍内閣で大臣の再任が決まり、また9月28日に政策集団「水月会」を発足させるなど、今や時の人でもある石破氏が熱く語った。
国が守られてこそ、地方創生がある
我々が今やろうとしている地方創生は、決して流行りすたりでやるわけではない。「地方創生の課題と展望」と題した資料には、日本の将来人口や人口移動の状況、高齢化の問題などのデータが示されており、それを見て「今は静かな有事だ」という認識をしている。
国家主権の三要素は、領土と国民と統治機構で、国の独立を守るということは、この3つだけは、外国に指一本触れさせてはならない。ただ、「国を守ります」と言いっても、仮に出生数・死亡数が今後一定で推移すると、現在1億2700万人の日本の人口が、85年後には半分以下の5200万人に、西暦3000年には1000人となり、やがてなくなる。このような事態をどう考え、どのようにして止め、地方創生という政策をどう講じていくか、というお話をしたい。
その前に、日本国民は国の独立を、どれほど考えたことがあるのだろうか。国の独立を守るのが軍隊で、国民の生命、財産、公の秩序を守るのが警察だ。同じ実力集団だが、その目的は全く異なるということを教えられ人はほとんどいない。
また、集団自衛権をめぐっていろいろな議論があるが、そもそもどうしてこの権利が、わざわざ国連憲章に書かれたのか。まずは国連憲章をしっかり読んでほしい。そこには侵略戦争も自衛戦争もだめだと書かれている。悪い国から攻められたら、国連が来てくれるはずだが、拒否権を持つ5か国が拒否をしたら、国連は来てくれない。その場合は、「自分の国は自分で守ってもいいですよ」というのが個別的自衛権で、「関係の深い国同士、お互いに守り合っていいですよ」というのが集団的自衛権である。
そのため、日本は合衆国と日米同盟を結び、合衆国は日本防衛の義務を負い、日本国は合衆国に基地提供の義務を負う。お互いに負っている義務の内容が違うという、世界でたった一つの同盟である。
私共、日本の国は今までいくつかの前提の下に、国家を運営してきた。その一つが東西の冷戦だ。アメリカとソビエトが対等な力を持っていたがゆえに、冷戦時代は大戦争が起こらなかった。しかし、もはやこの冷戦構造はなくなったので、安全保障や同盟の維持に、今までの何倍もの努力をしなければ、この国の独立は保てない。
地方産業の伸びる要素はたくさんある
列島改造論や田園都市構想、ふるさと創生など、これまで地方の発展を唱えなかった政権は一つもない。しかし、ふるさと創生以外、冷戦時代の話である。そしてこうした政策は、経済は成長し、人口は増え、地価は上がることを前提にしてきた。
しかし現代は、経済はそれほど伸びない。人口は増えないどころか、日本の人口減少は、おそらく人類がいまだかつて経験したことがない規模とスピードで起こる。このように、今までの政策の前提が全部変わった。
地方創生というのは、東京の人と富を地方らばらまこうというようなことを考えているのではない。昭和30年からたった15年の間に、この東京圏には全国から500万人が来たという、人類史上かつてないことが起こった。昭和30年に15歳で東京に来た人は、今年75歳、いわゆる後期高齢者に入る。
東京が抱えている課題は、急速な高齢化とともに断トツの少子化をどうするか。この東京の負荷をどうやって減少させるかは、東京とのためというより、むしろ日本国全体のためにこれをやらねばならない。
一方、地方はこれから先、若い人がどんどん出ていけば、高齢化率は高止まりしたままだが、高齢者の絶対数は減る。高齢者の医療や介護に地方の多くの若い方々が従事しているのだが、高齢者の絶対数が減り始めると、そこに失業が起こる。東京はその分野のマンパワーが足らないので、もう一度若い人たちの東京への集中が起こる。
かつてのように、再び東京に若い人たちがどっと集まる。食糧やエネルギーがつくれず、出生率が最低の東京に集まるということは、何のことはない、何年かの時間差をおいて、東京も同じように衰退するという結果が、このままいけば起こる。
これを止めなければならない。かつてと同じように地方の雇用と所得を、公共事業に期待するのが難しければ、それは何か。それは農業、漁業、林業、観光である。日本ほどこれらの産業にむいた国はないはずで、ここに伸びる要素がたくさんありはしないか。
冒頭に国の独立とか、大それた話をしたが、要は「1億層活躍」というのは、一人ひとりが幸せを実感できる社会だと思う。働きたい人が働ける状況をつくる、それぞれの生きがいを阻んでいるものは何で、政治が取り除けるものは何か。今まで手をつけてこなかったこと、実は実態がよくわからなかったことを、これからやるかやらないかが、我々の政権に与えられた課題だと思う。
新たな政策集団「水月会」を発足
最後に水月会について、少し説明させてもらう。自民党が結党し、初めて総裁選挙があったのが昭和31年で、その時にいろいろな派閥ができた。今の派閥はすべて、その時に端を発している。しかし、そのような政策集団を持たないのは、今度の水月会が初めてである。
私が思うに、安倍さんが無投票で再選されたが、無投票になったからには、自由民主党員、なかんずく我々国会議員は、安倍政権が続く限り責任を持って支えることと、いつの日か来るであろう次の政権を選ぶ時に、外交や安全保障、社会保障、農林水産の問題に、法律や税制、経済運営、国際法までも含めてどうするかを示すことは、政策集団が日本国に対して果たす責任である。
「勇気と真心を持って真実を語る」とは、渡辺美智雄先生にお教えをいただいたことだ。真実を見つけることは決して容易なことではなく、見つけた真実はたいてい受けが悪いと決まっている。それを語るには勇気がいる。
また、有権者の方々に、「あいつの言うことだったら聞いてみようか」と思ってもらわなければ、ハードな政策はできない。ハードな政策をやらず、国民に政治がおもねった時に、国は必ず倒れると私は思っている。
政治を信じている人は、ほとんどいないだろう。逆に、政治家は国民を信じているのか。「これを言ったら選挙に落ちるよな」といって、本当のことを語らない政治家が、国民を信じているとは私は思わないし、国民を信じていない政治家が、国民に信用されるなんてことを考えないほうがいい、ということを考えている昨今である。
※講演全文は月刊『世界と日本』1257号に収録されます。また、要約は週刊「世界と日本」2065号に掲載されます。
※講演の動画・資料は会員限定で「内外ニュースチャンネル」でご覧頂けます。
http://www.naigainews.jp/懇談会/懇談会動画/動画-石破氏201510-会員専用/
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