エネルギー特集
エネルギーチャンネルは、石破政権の重要テーマでもある「エネルギー」の特設サイトです。週刊・月刊「世界と日本」の執筆者、東京・各地懇談会の講師、専門家のインタビュー記事等を掲載して参ります。
2024年8月5日号 週刊「世界と日本」第2274号 より
《こやま けん》
1986年早稲田大学大学院修士修了後、日本エネルギー経済研究所入所、2001年英ダンディ大学にて博士号取得。政府のエネルギー関連審議会委員、国連のアドバイザーなども歴任。13年から東京大公共政策大学院客員教授。17年から東京工業大学科学技術創成研究院特任教授を兼務。23年The OPEC Award for Research受賞。近著に『地政学から読み解く!戦略物質の未来地図』(あさ出版)など多数。
国際エネルギー情勢と日本の課題
日本エネルギー経済研究所
専務理事・首席研究員 小山 堅 氏
2022年のロシアのウクライナ侵攻によって国際エネルギー情勢は不安定化しエネルギー価格は高騰した。原油価格はリーマンショック後最高値を更新、欧州天然ガス価格は史上最高値をつけた。ロシアのエネルギーに依存していた欧州を中心に国際エネルギー市場には供給不足が発生し、エネルギー安全保障が最重要課題となった。
ウクライナ危機発生から2年以上が経過し、国際エネルギー情勢は一定の落ち着きを取り戻した。原油・ガス価格は2022年のピーク時から低下し、当時のような「エネルギー危機」の切迫感は無い。
しかし、世界経済や国際政治に重要な影響を及ぼす原油価格は現在も約80ドルを中心とした推移が続いている。この価格は決して低い価格とはいえない。歴史的な観点では高い価格水準であり高止まりが続いていると見るべきである。
しかも国際エネルギー情勢には、様々な不確実性が山積し、その展開次第でエネルギー価格がさらに上昇する可能性がある。こうした不確実性・リスク要因の第1には地政学リスクがある。国際エネルギー市場の供給の重心である中東情勢の流動化は相変わらずである。2023年10月に始まったガザ危機は未だに終わりが見えず、その中で、イスラエルとイランの軍事的衝突の発生などイランを巡る情勢も不透明である。
またウクライナでの戦争が長期化する中、双方が相手のエネルギーインフラへの攻撃を強めエネルギー供給に影響が出る局面も続いている。
また台湾新政権と中国の関係、台湾海峡の安定がどうなるのかもエネルギー安定供給に影響を及ぼし得る要因である。
地政学リスクに加えて、本年1月にバイデン政権が発表した米国LNGの輸出許可に関する「一時停止」など、突然の政策変更がエネルギー市場の安定を揺さぶる可能性もある。政策変更に関しては、本年11月の米国大統領選挙の結果次第で、国際エネルギー情勢の安定の要である米国の、エネルギー・気候変動政策が文字通り劇的な方向転換を迎える可能性もある。長きにわたるエネルギー転換の過程において重要な役割を果たす化石燃料の安定供給にとって、適切な投資が実施されずに需給逼迫と価格高騰がもたらされる過少投資リスクも注目すべきである。
また、重要な戦略物資であるエネルギーにおける、特定供給源への過度の依存とそれに伴う市場支配の問題も見逃せない。この古くて新しい「リスク要因」は、過去も現在も国際エネルギー情勢を揺るがしてきたが、今後も世界の分断が深刻化する中で、新たな重要課題となる。
さらに、エネルギー需給構造における電力化が脱炭素化と共に進展していく中、生成AIの急速な利用拡大、それに伴うデータセンターの大増設などの新たな情報革命の下で電力需要が急増し、電力安定供給問題が関心の的となっている。この状況下、サイバーセキュリティ問題が電力およびエネルギー安全保障上の重要なリスク要因に浮上している。
このように、エネルギー安全保障を巡る内外情勢は複雑化し、難しさを増している。ウクライナ危機によってエネルギー安全保障が最重要課題になったが、新たなリスク要因や不確実性に対応する戦略が重要となった。他方、気候変動対策も待ったなしである。COP28で示された「気温上昇を1・5℃に抑えるための野心的な目標」の実現に向け、国際社会の努力が求められている。今日の世界は、エネルギー安全保障と脱炭素化の両立を強力に進めることが必要なのである。
しかしこの2つの両立は容易ならざる挑戦である。特に最近2〜3年で明確となった、先進国もエネルギー価格上昇には政治・経済・社会的に脆弱である点を踏まえると、エネルギー転換促進によってエネルギーコストが上昇する場合、それを社会が吸収できるかどうか、という問題がある。2023年には欧州などでエネルギーコストが上昇するような政策(内燃機関自動車の新車販売禁止など)を先送りするような動きが顕在化した。先に実施された欧州議会勢力で、左派・環境派が議席を減らし右傾化が進んだことの背景にも欧州の世論の変化の影響が指摘されている。
従って、エネルギー安全保障と脱炭素化の両立を図る上でも可能な限りエネルギーコスト上昇を抑制することが肝要になる。そのためには、各国の国情を踏まえ最適な道筋を追求することが必要である。昨年のG7で打ち出された「多様な道筋」を認めて、最適な方法を追求していく必要がある。
国際エネルギー情勢を見る上でもう一つ重要なのが世界の分断である。分断が深刻化する前は、自由貿易と国際分業による世界での最適化の貫徹が重要であった。
しかし分断の深刻化で、戦略物資・技術については、国産化を進め、それを同盟国・戦略的連携パートナー間での協力で補完する、という取り組みが進められている。再生可能エネルギーや電気自動車などにおける製造シェアや、今後のエネルギー転換に必要不可欠なクリティカルミネラルにおける供給シェアにおける中国の存在感の大きさが、広義のエネルギー安全保障や経済安全保障の観点から重要課題となっている。
こうした国際エネルギー情勢を踏まえた日本のエネルギー政策検討が進められている。概ね3年に一度、改定される「エネルギー基本計画」に関する議論がこの5月に始まった。現行の第6次エネルギー基本計画は2021年10月に閣議決定されたが、その後の激動の国際エネルギー情勢を踏まえた政策審議が進められている。
前述の複雑で難しい国際エネルギー情勢に対応し、日本にとってエネルギー安全保障、環境、経済効率性からなる「3E」の同時達成を求める骨太のエネルギー政策が求められている。
エネルギー転換に必要なイノベーションを推進し、日本の国際競争力を強化する産業政策との一体化を図るエネルギー政策を立案し、実行することが今後の日本のサバイバルにとって不可欠となっているのである。
2023年8月21日号 週刊「世界と日本」第2251号 より
《こやま けん》
1986年早稲田大学大学院修士修了後、日本エネルギー経済研究所入所、2001年英ダンディ大学にて博士号取得。政府のエネルギー関連審議会委員、国連のアドバイザーなども歴任。13年から東京大公共政策大学院客員教授。17年から東京工業大学科学技術創成研究院特任教授を兼務。23年The OPEC Award for Research受賞。近著に『地政学から読み解く!戦略物質の未来地図』(あさ出版)など多数。
エネルギー安全保障と脱炭素化の両立に向けて
日本エネルギー経済研究所
専務理事・首席研究員 小山 堅 氏
エネルギーは日々の暮らしや経済活動にとって必要不可欠である。またエネルギーは国家運営にとって欠かすことのできない戦略物資でもある。高い重要性を持つエネルギーだが、その価格が低位安定し供給がふんだんな時には、あたかも「空気や水」のような存在と化し、誰もエネルギー安定供給確保に注意を払わない。しかし、ひとたびエネルギー価格が高騰し供給確保に不安が発生すると事態は一変する。
ウクライナ危機による国際エネルギー情勢の激変はその象徴的事例である。ロシアのウクライナへの軍事侵攻で、世界最大の化石燃料輸出国であるロシアのエネルギー輸出が重大なリスク要因そのものになった。世界的に原油・天然ガス・LNGの価格が著しく高騰し、電力価格も大幅に上昇した。ロシア産のガスに依存していた欧州では、買おうと思っても手に入らない「ガス不足」の発生すら懸念される事態に陥った。
深刻なエネルギー危機に直面し、2022年以降、世界的にエネルギー安全保障強化が喫緊の重要課題となった。ロシア依存度を引き下げ、緊急時対応能力を強化し、市場安定化へ供給力確保が重視され、安定的ベースロード電源である原子力の利活用が再び注目されるようになった。厳しい需給逼迫に直面した欧州では、徹底的な省エネ・再エネ推進の上、CO2排出増を覚悟して石炭火力発電の活用も急務となった。また、劇的に低下したロシア産のパイプラインガス供給を補うため、米国産を中心に国際市場からLNGの追加調達を必死に行った。こうした対応が奏功し、かつ2022〜2023年の冬期が暖冬であったこと、中国のエネルギー需要、とりわけLNG需要が低迷したことなどもあって、欧州はガス不足を回避し、一時は異常な暴騰を示したガス価格も落ち着きを取り戻した。
しかし、今後も予断は許されず、国際エネルギー市場は不安定な状況が続く可能性は高い。原油価格は最近再び上昇傾向を示し、ガス・LNG価格は、今冬が厳冬になり、中国の需要が回復し、想定外の供給支障が発生する事態となれば再び「争奪戦」的な状況が発生する可能性もある。大規模供給プロジェクトが立ち上がっていく2025〜2026年まで、世界のガス・LNG市場の需給環境は厳しい状況が続くだろう。
日本では国内電力需給逼迫の問題もある。夏・冬の電力需要増大に対して予備率(発電設備の十分さ)は必ずしも万全でなく、綱渡りに近い状況も散見される。想定外の気温状況や発電設備の脱落で、一気に需給が逼迫する可能性もある。また、発電設備を持つだけでは十分でなく、設備を動かす燃料の安定調達も重要である。原子力発電再稼働への期待も高いが、安全審査や地元了解には時間もかかり、電力需給安定化は決して容易でない。この状況下、世界でも日本でも、引き続きエネルギー安全保障強化は最重要課題であり続ける。
他方、脱炭素化の取組みも手を緩めることは許されない。ウクライナ危機でエネルギー安全保障が最重要課題となり、欧州でも石炭回帰的な動きが現れ、途上国の状況も含めCO2排出削減にとって難しい状況も現れている。しかし、世界各国はカーボンニュートラル目標を始め脱炭素化の取組みへのコミットメントを堅持している。むしろ欧州連合(EU)のように、脱ロシア(エネルギー安全保障強化)を脱炭素化推進の新たな推進力として中長期的取組み強化を図る動きも顕在化している。ウクライナ危機の影響下、エネルギー安全保障強化と脱炭素化推進の両立を図ることが今日の世界のエネルギー・気候変動政策の重点となったのである。日米欧など世界の主要国はこの両立を図る戦略方針を追求していくだろう。
これが世界のエネルギー転換を推進する重要な力になっていく可能性がある。しかしその道程は決して平坦ではなく課題は多い。その一つは、エネルギー転換を進める際に起こりうるエネルギーコスト・価格の上昇への対応である。最近の経験で、先進国といえどもエネルギー価格の上昇は経済・社会的に大きな影響を及ぼし、補助金を活用してでも価格上昇を抑制する動きが現れることが明らかとなった。価格上昇の影響がさらに大きいのは所得水準の低い途上国であることは自明である。この状況下、今後のエネルギー転換に伴って発生しうるエネルギーコスト・価格上昇をどう抑制・最小化するか、が極めて重要になる。その際には、各国の国情やエネルギー需給・資源賦存などの差異を踏まえた対策を追求することが欠かせない。G7広島サミットで合意された、共通目標の追求にあたって「多様な道筋」を認めていくことが肝要となる。欧米が「上から目線」で「唯一の道筋」によるエネルギー転換を途上国に押し付けるようなアプローチは厳に慎む必要がある。
もう一つ重要なのは、世界の分断の深刻化を前提とした戦略が重要になる、という点である。米中対立や西側と中ロの対立の深刻化に象徴される世界の分断は、経済安全保障を含む総合的安全保障の重視をもたらした。その一環で、クリティカルミネラルの問題がクローズアップされている。レアアースなども含むクリティカルミネラルは、エネルギー転換の推進に必要不可欠な戦略物資だが、今後の大幅な需要増大によって需給逼迫が懸念され同時に特定国への供給偏在も指摘されている。戦略物資の供給を特定国に依存することのリスクは、50年前の石油危機でも、現在のウクライナ危機でも明らかになった重大な教訓である。今後、エネルギー安全保障と脱炭素化を目指すエネルギー転換を推進していく際には、クリティカルミネラル問題などの経済安全保障も含めた総合的・戦略的検討が必要不可欠になる。またエネルギー転換を具体化していくための産業政策を適切に立案・遂行し、エネルギー転換の中で経済・産業のサバイバルや発展を追求していかなければならないのである。
2022年12月19日号 週刊「世界と日本」第2235号 より
《こたに かつひこ》
74年東京大学卒業後、新日本製鐵(現・日本製鉄)入社。84年コーネル大学(MBA)。2001年同社環境部長、05年中国総代表・北京事務所長を経て、09年日鉄住金建材(現・日鉄建材)専務取締役。あしなが育英会監事。16年から現職。
2050年カーボンニュートラルに向けて
— 建前論脱却を目指して —
国際環境経済
研究所理事長 小谷 勝彦 氏
昨年(2021年)のCOP26では、産業革命以来の温度上昇を1・5度以下に抑えるための温暖化ガス削減が合意されるとともに、石炭火力の段階的逓減(ていげん)も打ち出され、環境推進派の人たちに高揚感があった。
ロシアのウクライナ侵攻
ところが、今年2月のロシアのウクライナ侵略により、欧州へのロシア産ガス供給途絶の危機感が高まり、世界では温暖化対策からエネルギー確保に大きく舵が切られた。
脱原発のドイツが廃止を延長、英仏でも原発新設の動きが起こり、わが国の岸田首相も原発再稼働を指示した。
ロシアの低廉な天然ガスに頼っていたドイツがLNGの確保に走り出し、発展途上国は高騰するLNGにアクセスできなくなった。
あれほど「悪者」扱いされた石炭確保にEUが走り出した。
日本で「温暖化対策の模範生」と褒め称えられるドイツは、国内の褐炭火力を再稼働する。
温暖化対策は、S(Safety)+3E(Environment,Economic Efficiency,Energy Security)のバランスが大切と言われてきたが、環境(Environment)に軸足が乗っていた。
厳しい冬を迎え、欧州はエネルギーセキュリティーに重点を移した。
金融の功罪
金融の役割は産業の潤滑油である資金供給であるが、「ダイベストメント」(特定産業の資金剥がし)の旗が振られている。
英国イングランド銀行前総裁のマーク・カーニー氏の提唱で2021年に発足したGFANZ(温暖化ガスネットゼロを目指す金融同盟)は、化石燃料への投融資を厳格化する。
CO2排出が多い石炭等の化石燃料を一刻も早く全廃すべきと考え、化石燃料資源を保有すると無価値な座礁資産になると主張する。GFANZ参加の金融機関は、石炭をはじめ化石燃料の資源開発に投融資しない。
その結果、化石燃料の資源開発は抑制され、今回のエネルギー危機に石炭、LNGの供給が追いつかなかった。
さらに、株主総会においても、環境団体が株主提案で企業に圧力をかけている。
2022年6月のわが国の株主総会で、気候ネットワーク等の環境NGOは、Jパワーなどに気候変動対応に定款変更する株主提案を行った。(これは否決されたが)
金融は神様の役割を担うのか。
時間軸をどう捉えるか
世界は、温暖化対策よりもエネルギー確保に走り出している。
しかし、スウェーデンの少女グレタ・トォンベリさんから「大人は恥を知れ」と言われ、新聞でも「気候危機」と煽られる我々にとって、カーボンニュートラルは大丈夫か。
2度目標は今世紀末までに実現したいと言われていた。ところが、COP26で1・5度とより厳しい目標が合意され、2050年カーボンニュートラルと前倒しになった。
これは実現可能なのか。
エネルギー供給面では、原子力、水力、風力、太陽光、地熱、化石燃料と様々な代替手段があり、コストが安くCO2原単位の少ない電源を選択できる。
需要面の鉄鋼、化学、セメントなどの製造は化学反応であり、現状プロセスを脱炭素化する代替技術は未だ確立していない。
鉄鋼では、炭素に替えて水素を還元剤とする技術革新を行うとともに、実用化に向けて水素を大量かつ安価に調達できるインフラ整備が必要だ。
しかも、水素還元した製品は、従来品と同等であり、膨大な研究投資に見合った製品価格を消費者が払う保証はない。
CO2を垂れ流す製造国の「悪貨が良貨を駆逐する」かも知れない。
日本の立ち位置:多様性を
温暖化先進国EUと比べて「日本は遅れている」と言われてきた。
「今すぐ再エネ100%を目指せ」と言われても、英国や北ドイツは偏西風が年中吹くが、我が国の風力発電適地は少ない。(2022年冬に英国で風が止まり、ウクライナ侵略以前にエネルギー危機は始まっていた)
太陽光も、わが国は国土面積あたりの太陽光設備はドイツを抜いて既に世界一位である。(メガソーラーについて、土石流等の環境被害を危惧する自治体も増えている)
「再エネ100%」には、太陽が陰ったり風が止まった時のバックアップ電源が必要となる。(揚水発電や火力発電が待機する)
欧州は各国間に電気やガスの融通ネットワーク網があるが、わが国は孤立した島国であり、エネルギーセキュリティーは自ら確保しなければならない。
「再エネ一本槍」と一つのエネルギーに決め打ちするのではなく、多様なエネルギーが必要である。
日本の立ち位置:地球レベルの主導を
地球温暖化対策は、世界の国々が手を携えて実施する性格のものである。
京都議定書(1997年)は先進国のみの責任であったが、パリ協定(2015年)は発展途上国も含めた地球レベルの努力を謳った。
今後の主役は、成長する発展途上国が、エネルギーを活用しつつカーボンニュートラルを実現することが大切だ。(図:CO2が増えるアジアがカギ)
COP26で、石炭廃止を迫られたインド、中国は、「いまだ電気の通わない国民のために国内資源の石炭火力は止められない」と反旗を翻した。
世界人口の8割を占める発展途上国にとって、エネルギー確保は成長にとって不可欠である。
日本は、世界のわずか3%のCO2排出国であり、自虐的に「反成長」を目指す必要はない。むしろ、世界をリードする省エネ技術を移転し、発展途上国の温暖化対策に貢献すべきだ。
来年はG7の議長国であり、かつて後進国であった経験からも、発展途上国の代弁者としての発信が期待される。
建前論脱却を目指して
2030年46%削減は、官民で積み上げた26%を根拠なく上乗せした目標である。(週刊「世界と日本」昨年10月18日号に掲載)
辻褄合わせとして、鉄鋼は1億トンから9000万トンと規模縮小させるなど、成長しない産業構造を前提としている。
円安の下で貿易収支が悪化し、購買力が低下した衰退国家で良いのか。
企業は国際競争に打ち勝つ成長戦略を自ら構築するとともに、国家もこれを支える産業政策でサポートすべきだ。
1980年代、「日本の産業政策を非難していた」米国がグリーン産業政策を打ち出し、EU、中国も産業競争力強化を最優先している。
最後に
ドイツのロシア天然ガス依存は、ロシアのウクライナ侵略で非難されている。
戦後の冷戦下において、NATOは、強力なソ連地上戦車隊の西欧侵略を阻止すべく、ドイツを戦場にして核兵器で防衛する戦略を持っていた。
西ドイツのブラント首相の東方外交は、ソ連と西ドイツをガスパイプラインで直結し、緊密な経済協力により自国の安全を確保するとともに、LNGと比べて安価な天然ガスを活用したドイツ産業競争力強化であったことを忘れてはならない。
2022年8月15日号 週刊「世界と日本」第2227号 より
《こやま けん》
1986年早稲田大学大学院修士修了後、日本エネルギー経済研究所入所、2001年英ダンディ大学にて博士号取得。政府のエネルギー関連審議会委員、国連のアドバイザーなども歴任。13年から東京大公共政策大学院客員教授。17年から東京工業大学科学技術創成研究院特任教授を兼務。近著に『激震走る国際エネルギー情勢』(エネルギーフォーラム)など多数。
ウクライナ危機下の原油・天然ガス市場展望
日本エネルギー経済研究所
専務理事・首席研究員 小山 堅 氏
1.高騰する原油価格
原油価格は、2020年前半にコロナ禍の影響で大暴落したがその後回復し2021年後半には一気に上昇、同年10月には1バレル80ドルを突破した。その後原油価格をさらに押し上げたのがウクライナ危機である。
ロシアの軍事侵攻開始で原油価格は急騰、100ドルを超え、2022年3月初に米国がロシア産エネルギーの禁輸を発表すると原油価格は瞬間風速で130ドルを突破した。ただし、ロシア産エネルギー輸入がほとんどない米国の禁輸は影響が限定されることから、市場は冷静さを取り戻し、原油価格は100ドル前後の推移に戻った。次にロシア石油を大量輸入する欧州の動向が注目される中、5月4日にEUが2022年内のロシア産石油輸入停止の方針を提案、5月30日にはパイプライン輸入を除外して禁輸に合意した。EU禁輸を受けてロシア産石油への供給不安が高まり、原油価格は6月に入って120ドル台に上昇した。しかしその後は世界経済不安による石油需要減少が懸念され、米国原油価格は8月4日に90ドルを割り込んだ。他方、G7が検討するロシア産石油の価格上限制度導入に対するロシアの反応やEUによるロシア産石油を輸送する船舶への保険付保制限などの影響も不明であり、今後のロシアの供給については大きな不確実性がある。これらの動向次第で原油価格は大きく変動する。
2.欧州ガス価格は原油以上の暴騰
ロシアのガス輸出は世界シェア25%を有し、その過半は欧州向けである。万一、ロシアのガス供給に大きな支障が発生すれば市場は大混乱に陥る。その不安から原油が130ドルを突破した3月初には、欧州天然ガス価格は100万BTU(英国熱量単位)当たり70ドル超(原油換算400ドル超)の暴騰となった。原油と同様、この超高価格から、市場は落ち着きを取り戻し、欧州ガス価格は同30ドル程度まで戻したが、6月に入ってロシアが欧州向けガス供給を停止・大幅削減する動きが続き、主力のノルドストリーム1パイプラインでの供給が大幅削減(7月11日からは停止)したことでガス価格は再び大きく上昇、同50ドル超となった。この状況下、欧州では、今冬にガス不足が発生するとの懸念が高まっている。連動してアジアのスポットLNG価格も大きく高騰した。
6月30日、ロシアはサハリン2について、新事業主体を設立し運営移管する方針を発表した。この動きで日本企業の重要な権益が脅かされ、同時にサハリン2からの供給を主体とした約600万トンのロシア産LNG供給に対する不安感が高まる事態となった。今後のロシアの動きは、天然ガス・LNG市場でのさらなる価格高騰を招きかねないものである。
3.当面の原油および欧州天然ガス価格展望
現在から2023年にかけての短期市場展望を行う際に重要なのはウクライナ危機下でのロシアのエネルギー輸出の将来である。世界経済、サウジアラビア増産、米国シェールオイル・ガス増産、主要産油・産ガス国での供給支障発生等、様々な要因が影響を及ぼすが、将来展望の基軸となるのはロシアのエネルギー輸出の将来である。
第1のシナリオは、ウクライナを巡る地政学リスクは存在し続けるが、ロシアのエネルギー供給に大規模な途絶や支障が一気に発生することはなく、現在までの展開が継続するというものであり、これが基準シナリオとなる。その場合、原油価格は100ドルを中心として、供給不安や世界経済不安の影響でプラスマイナス20ドル程度の推移となる。天然ガスは、欧州市場で100万BTU当たり30〜40ドル(原油換算200ドル弱から200ドル台前半程度)が変動の中心で、そこからプラスマイナス10ドル程度の振れ幅となる。アジアのスポットLNG価格は欧州ガス価格に連動する(以下同様)。
第2のシナリオは、ロシアの供給に相当規模の途絶・支障が一気に発生し市場が大きく不安定化するというものである。この場合、原油も天然ガスも、史上最高値を更新して一気に急騰する。ただし原油価格については、史上最高値を超える局面でサウジアラビアなどが余剰生産能力を活用して増産し、IEAも協調備蓄放出に打って出る。従って一気に最高値となった後、価格は抑制される方向に向かう。ただし、120ドル超の高価格が相当期間続く。より深刻なのは欧州ガス価格である。ロシアの供給途絶を補填する余剰生産能力が市場に存在せず、LNG備蓄も限定的であるため、ロシア供給減の分だけ世界の供給全体が縮小し、その中で消費国の獲得競争が激化する。そのため、史上最高値(100万BTU当たり70ドル、原油換算400ドル超)を上回る高値が相当期間持続する展開となる。
第3のシナリオは、ウクライナ危機そのものが収束の方向に向かう、あるいは停戦が実現し、エネルギー輸出に波乱は発生しない、というものである。この場合、原油価格も欧州ガス価格も現在よりは大きく下がる。ただし、停戦が実現したからと言って、エネルギー需給そのものが改善するわけではない。従って、価格は下がっても、ウクライナ危機深刻化の前段階にまで戻る、というイメージであり、原油価格で70〜80ドル、欧州天然ガス価格で100万BTU当たり20ドルが変動の中心になる。
ロシアのエネルギー輸出次第で上述のように将来シナリオが分かれるが、現在のエネルギー市場では、世界経済動向の影響も注目されている。エネルギー高騰などによるインフレ高進への対策として欧米で実施されつつある利上げ政策が世界経済を減速させ、インフレと景気後退が同時進行するスタグフレーションへの懸念も高まっている。世界経済が大きく減速すれば、原油も天然ガスも価格が強く下押しされる可能性は十分にある。
ロシアのエネルギー輸出大幅低下の可能性が眼前にあると同時に、世界経済悪化とその影響も見逃せない状況となっている。これら要因の影響下で原油も天然ガスも価格は極めて不安定でボラティリティの高い状況が当面は続こう。今後の展開は要注意である。
2022年5月23日号 週刊「世界と日本」第2221号 より
《さわだ てつお》
1957年兵庫県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、三菱総合研究所に入社。ドイツ・カールスルーエ研究所客員研究員、東京工業大学助教(工学博士)などを得て、22年から現職。中・高校生向け講座も多く開催。専門は原子核工学、核融合システム安全など。
ゼロカーボンエネルギー社会のプラットフォーム
―岸田首相は再稼働を加速せよ―
元東京工業大学助教 エネルギーサイエンティスト 澤田 哲生 氏
脱原発委員会健全なり
私は2012年の発足当時から、わが国の原子力規制委員会は“脱原発”委員会であるとその根拠を示しながら主張してきた。
設置から10年、いよいよそのことが明々白々になってきた。なぜなら、原発新設の具体的な企画はいまだに姿を表していない。新設がなければわが国の各原子力発電所はその設置から原則40年を経れば廃炉になる。
先ごろ初代原子力規制委員長の田中俊一氏は、放射線安全フォーラムの会合で講演し、日本の原子力発電は現下の新規制基準のもとで適合したものの範囲のみで運用し、小型モジュラー炉(SMR)などの新型原子炉の新設への動きを厳しく牽制した。
田中氏は、委員長を退いた後も現委員長の更田豊志氏などを含む私的勉強会などを通じて、隠然たる影響力を遺憾なく発揮しているのである。このような仕掛けによって、“田中イズム”が今なお原発新設を阻むくびきとなっている。田中イズムの真髄は、原発ゼロ、核燃料サイクルの廃止である。そしてそれに代替する案を提案する気はさらさらない。無責任極まりないのである。
現行の規制態勢(制度と人)を刷新しない限りは、この国は原発の緩やかな死に向かって邁進し続ける。
ロシアのウクライナ侵攻で化石燃料市場は逼迫し各国の奪い合いになり価格は高騰している。この状態はこの先少なく見積もっても10年は続く。なぜなら産油国などが燃料増産に舵を切ったとしても、資金調達と設備の増設には10年レンジのタイムラグがあるからである。
このような状況を生み出した底流には、『化石燃料への依存はグリーンタクソノミー、ESG投資の観点から“悪”である』とする価値観がある。今次の戦争はそのことを際立たせたにすぎない。
日本は、天然ガス火力、石炭火力に併せて70%以上の電源を依存している。そのような中で救世主となるのは原子力発電なのだが、目の前にある柏崎・刈羽原子力発電などは適合性審査に受かったもののうんともすんとも言わない。その状況の根源を原子力行政に仕込んだのが田中俊一氏である。それは、氏が13年4月に発出した通称“田中私案”にある。この私案によって、全国の原発は有無を言わせず一斉に停止に追い込まれた。そして新規制基準の下での適合性審査という長い険しい道に全ての原発が追い込まれた。当時田中氏はメディアの質問に答えて審査期間を6カ月程度と言い放った。しかし、これは大いなるまやかしであった。この発言から10年経っても審査中のままで適合認可を得ていない原発があることを忘れてはならない。
世界の趨勢に取り残される日本
欧州はEUタクソノミーで原発がグリーン認定された。その結果、2月にフランスのマクロン大統領は最大14基の大型原発を新設すると発表した。マクロン氏が大統領に再選されたことでこの施策は加速すること必定。フランスの電源構成は、原子力67%、自然エネルギー24%、火力9%である。欧州の大国の中では電源部門の脱炭素の達成に最も近い。
新設される原子力発電は、天然ガスの価格高騰および電気料金の上昇の対策にあると同時に脱炭素を加速するという効能がある。そして、ドイツなどの近隣諸国への輸出に振り向けられる。ドイツは22年中に残る3基の原発を閉鎖するとしているが、ウクライナ情勢によってその方針は大きく揺らいでいる。ただしドイツは自国で原子力発電を廃止したとしても、隣国から買ってくれば良いわけでこれでは脱原発を達成したとは言えない。
イギリス政府は、4月上旬、今後最大8基の原発を新設すると発表した。50年までに電源の25%を原子力で賄う計画だ(現在は20%程度)。また約40%を天然ガス火力に依存しており、ロシアのウクライナ侵攻で高騰した化石燃料価格に対抗する意図がある。
欧州以外では、中国、インドなどは従来通り意欲的に原子力発電を増設しているし、米国ではナトリウム冷却高速炉や高温ガス炉を28年までに建造するとしている。
このように世界の趨勢は原子力発電の増強に向かって動いている。
日本の原発はなぜ動かないのか
22年4月時点で、再稼動状態にある原子炉はわずかに10基、審査は通過したが稼働していないものが7基、審査中が10基、審査にもかかっていないものが9基もある。昨年度の原発が実質的に稼ぎ出した電力は、総需要のわずかに4%であった。
審査は通過したがいまだに稼働していない原発が7基もある。これは異常なことである。その7基には東海第二の1基と、柏崎刈羽6、7号機が含まれる。なぜ稼働しないのか?典型的に2つの理由がある。1つには、原発から半径30㎞(3.11以前は5㎞)に広がった避難対象区域の周辺自治体が稼働に難色を示していること。もう1つは、事業者自身の問題がある。事業者のガバナンスに対する懐疑があり、それは事業者自らがなかなか解決し得ない側面がある。
どちらも政治の出番なのである。
萩生田光一経産相は3月11日の閣議後の会見で、再稼働に向けて「国も前面に立って、関係自治体の理解が得られるようしっかりと粘り強く取り組んでいく決意だ」と表明した。
岸田総理は再稼働を加速せよ
しかし、避難を含む原子力防災は原子力防災担当大臣の所掌である。要するに総理大臣が意を決しないと前には進まない問題である。
しかしながら、このような状況に応えるべき岸田文雄総理大臣の動きは極めて鈍いままなのである。不思議というほかない。
電力の自由化とウクライナ危機による化石燃料の逼迫・高騰は電気料金の値上がりのみならず広域停電の危機をもたらす。
原発の再稼働、ひいては新増設がこのまま進まなければ、日本はこの先長きにわたって常に電力不足と広域停電の危機と隣り合わせの状況に置かれる。生活と産業の血である電力の欠乏は私たちの生活レベルを落とし、産業を衰退させていく。それは国家が衰亡していく事を意味する。
このままでは過去30年の沈滞がこの先も10年どころか延々と続いていく。
この国を衰退から救い、かつ脱炭素を実現するために原子力発電は欠くことのできないエネルギープラットフォームなのである。
今こそ岸田総理の決断の時であり、政権の総力をもってまずは原子力発電の再稼働のスピードアップ、そして新増設に叡智と胆力を持って取り組むべきではないのか。
2022年1月14日号 週刊「世界と日本」第2213号 より
《さわだ てつお》
1957年兵庫県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、三菱総合研究所に入社。ドイツ・カールスルーエ研究所客員研究員などを得て、91年から現職。中・高校生向け講座も多く開催。専門は原子核工学、核融合システム安全など。著書は『御用学者と呼ばれて』など多数。
デジタル化の進展に向けた
安定的な電力供給体制の構築
東京工業大学助教 工学博士 澤田 哲生 氏
自民党の麻生太郎副総裁は2021年12月18日、福岡市で講演した。そのなかで、日本のエネルギー政策に関し、太陽光や風力など自然エネルギーによる発電は高コストだと指摘。その上で「残るところは何かと言えば、短期的には原子力発電に頼る以外に方法がない」と述べ、当面は原発が不可欠だとの認識を示した。
しかし、この見識は甘い。急速に進む太陽光パネルの敷設にはすでに大量の外資が入り、自然エネルギーをブリッジにして、日本の国土が事実上外資に蝕まれている状態である。さらに、太陽光や風力といった自然エネルギーは日本国内の電力需要を満たすにはあまりにも広大な土地を必要とする。そのことはコストをさらに引き上げる要因になる。海外の低コストの自然エネルギー電力を導入するというアジアスーパーグリッド構想もあるが、それはエネルギー安全保障の観点から決してあってはならないことである。
これに先立つ2021年12月14日、トヨタ自動車は、電気自動車(EV)の世界販売台数を2030年に350万台とする目標を発表した。これまでEVシフトに消極的とみられていたトヨタが大きく舵を取った形である。
従来型の内燃機関を主軸とした自動車とEVとでは、据置電話とスマホほどの違いがある。EVは完全にデジタル化されていて、それ自体が巨大なネットワークに埋め込まれていて、ビッグデータやAIの端末になっている。
このように自動車のみならず、世の中はデジタルトランスフォーメーション(DX)に向かって急激に進化しようとしている。
DXの中核を担うのは、EVのみならずモノやシステムのインターネットであるIoT(Internet of Things)/IoS(Internet of Systems)、AI/Singularityなどなど。シンギュラリティ(Singularity)は特異点の意味で、DXの世界ではAIが私たち人類を知能的にも身体的にも凌駕(りょうが)して、私たちの生活は一変するという。
シンギュラリティーの前段階であるプレシンギュラリティーは2029年にも訪れるというという予測がある。私たちは、狩猟・農耕・工業・情報社会を経て、DXを核にした第5の社会“Society5.0”に向かっている。
Society5.0はオール電化の世界でもある。
日本はいま少子高齢化がどんどんと進んでいる。すると将来は人口が減少するので、日本の総消費電力が減っていくという認識が何となく共有されている。
しかし、それは大きな誤算である。例えば、高速道路などでEVが急速充電(大型バッテリー90kWh)を行えば、EV1台の急速充電に20〜30分程度かかるとして、一時的ではあるがそこに約30世帯程度の需要家が出現することになる(4人世帯の夏場の昼間の使用電力を1時間あたり1・4kWとして計算)。日本の乗用車(二輪、軽、トラック、バスは含まない)の保有数は約4000万台である。単純計算で、その10分の1、つまり400万台が、ほぼ同じ時間帯に急速充電すれば、一時的に1200万世帯分相当の電力が必要になる。2030年にはガソリン車がゼロになると喜んでいる場合ではない。ガソリンに代替する大量の電気需要を満たす発電装置が必要になってくる。しかも、それは二酸化炭素を排出しない電源でなければ意味がない。
原発ゼロに化石燃料火力も無くしていくと言う政治家がいる。EV需要などはDX時代の氷山の一角に過ぎない。
脱炭素ネットゼロの世界は、家庭で言えばオール電化である。都市ガスで調理する時代は終わりになる。しかし、それも氷山の一角である。DX時代の産業全てがネットゼロに向かうとすれば、私たちの目に見えないところで『富岳』のようなスーパーコンピュータが日本中で多数昼夜を問わず懸命の稼働を続けることになる。
科学技術振興機構低炭素社会戦略戦センターは、2030年のIT関連だけでもその電力消費量が、1480TWh/年(2016年のIT関連消費電力は41TWh)になるという予測値を報告している。これを全て太陽光発電でまかなおうとすると、東京ドーム約25万個分の設置面積が必要になる。これを各都道府県に割り当てれば、5000個となる。笑えないジョークという他ない。大型原発ならば150基程度でまかなえる。
不安定で変動し、給電指令に応えられず、広大な土地を要する再エネではDX時代を乗り切れない。脱炭素を目指し、同時に急速な電力需要に応えるには原発に頼らざるを得ないのが現実である。
岸田総理は、政権発足直後の2021年10月11日午後の国会で、原子力施策については「国民の信頼回復に努め、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた原子力発電所については地元の理解を得ながら再稼働を進めていくことが重要だ」と述べた。
しかし、再稼働だけではとても間に合わない。岸田政権は、“原子力発電所の新増設とリプレース”に直ちに舵を切るべきであり、3年後をめどに改定される第7次エネルギー基本計画にはそのことが明記されなければならない。
最近日立がカナダなどと協力してSMRの建造に乗り出すことが伝えられた。しかしそんな程度ののろまな“牛の歩み”では、DX時代にわが国は大きく出遅れてしまうことは確実である。
デジタル化の進展向けた安定的な電力供給体制を大型原子力発電所の新増設を軸に再構築することが急務である。
2021年10月18日号 週刊「世界と日本」第2207号 より
《こたに かつひこ》
74年東京大学卒業後、新日本製鐵(現・日本製鉄)入社。84年コーネル大学(MBA)。2001年同社環境部長、05年中国総代表・北京事務所長を経て、09年日鉄住金建材(現・日鉄建材)専務取締役。あしなが育英会監事。16年から現職。
2050年カーボンニュートラルに向けて
-産業競争力の視点から-
国際環境経済研究所 理事長 小谷 勝彦 氏
ビジョンとしての「2050年カーボンニュートラル」
昨年10月、菅前首相は「2050年カーボンニュートラルを目指す」と表明した。
これを受けて、産業界は革新技術によるグリーンイノベーションに挑戦している。
エネルギー供給面では、再生エネルギーや原子力に加え、水素・アンモニア火力、化石火力+CCUS、需要面でも、運輸の電動化に取り組む。
製造業では、鉄鉱石の還元にコークスを使う鉄鋼、炭酸カルシウムが原料のセメント、ナフサ原料の石油化学など、確立した製造プロセスで脱炭素の「代替性」が難しい「非エネルギー分野」がある。
鉄鋼業においては、カーボンに代わる水素還元が期待されるが、この技術は世界でも未確立であるとともに、CO2フリー水素の大量・安価な供給が必要だ。
2050年カーボンニュートラルは、到達点の見えないビジョンである。
2030年46%目標の唐突感
「我が国は2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す」と菅前首相が4月に宣言した。
従来の2030年目標は2013年比26%削減であり、エネルギー構成、産業界のコミットに基づき、各企業は技術開発・設備投資を実行しており、わが国の進捗は先進国に引けを取らない。(表1)
今回、それが唐突に上乗せされた。
「くっきりとした姿が見えているわけではないけど、おぼろげながら浮かんできたんです『46』という数字が。シルエットが浮かんできたんです」と小泉前環境大臣が語るように実現の裏付けはない。
(4/23TBS)
EUは1990年比55%削減を目標とし、米国も2005年比50〜52%の削減を掲げたが、共和党政権になれば、再びパリ協定から脱退する可能性は高い。
中・印等の発展途上国は、自国の経済成長のために2030年深掘りの言質を与えない。G7合計(世界の28%)になる中国が削減しないと、シェア3%の日本がいくら張り切っても効果がない。
政府は「2030年エネルギー基本計画」において、従来22—24%の再生可能エネルギーを36—38%と現状18%(水力を除くと7%)の倍増で辻褄合わせするが、太陽光は、既にドイツを抜いて「平地面積当たり世界一」であり、防災や景観面で自治体や住民の反発が強い。何より、日本の太陽光パネルは競争力を失い、ウイグル人権が問題視される中国製品に頼らねばならぬ。
原発稼働が進まず、石炭・天然ガス火力は削減するが、太陽光のバックアップ電源不足のブラックアウトを懸念する。
2050年のグリーンイノベーションの1つである洋上風力も2030年には間に合わない。
「地球温暖化対策計画」で、産業部門は国内生産縮小等により7%から37%へ、家庭部門は39%から66%削減へ上乗せした(表2)が、国民が「何をするのか」具体的に示されない。
EUの深慮遠謀
「遅れていた日本がEUに追いついた」と高揚する人もいるが、本当に良いことか?
EUグリーン戦略は、金融面でも石炭悪者論を唱え、石油、天然ガスの化石燃料にまでダイベストを主張する。
1997年の京都議定書時、EUはベルリンの壁崩壊直後の1990年を基準年としたが、東独の旧式設備を廃止し温暖化ガスの大幅削減を達成していたドイツ、北海油田開発による石炭公社の廃止で目途がついた英国の実績等、勝算があった。
欧州各国は電力系統網が張り巡らされ、ドイツが脱原発を言ってもフランスから原子力の電気を調達できるし、ロシアとはガスパイプラインが直結している。
これと比べて、わが国は孤立した島国であり、エネルギー安全保障は自らの責任で構築しなければならない。既に中国との天然ガス争奪戦が始まっている。
産業競争時代を勝ち抜くために
日本経済は、GDPの3割のグローバル企業が、輸出や海外生産で外貨を稼ぎ食料や原燃料の輸入を賄っている。
EUは、日本自動車の競争力あるHV技術を排除するなど、グリーンの名を借りた産業競争を仕掛けている。経済の屋台骨を支えてきた「モノ作り産業」が競争力を失うことなくカーボンニュートラルを実現するには、「国家として腰を据えた産業政策」が求められる。
切り札となるグリーンイノベーションだが、サンシャイン計画で産官学挙げて開発した太陽光発電技術が、コモデティー段階で低価格の中国勢に席巻された轍を踏んではならない。
再エネ推進の補助金として、再エネ電力固定価格買取制度(FIT)が設けられている。2012年参入者は高価格(40円/kwh、現在入札は10円台に下がっている)で20年固定買取という「濡れ手に泡」になっており、累積数十兆円のFIT賦課金は国民が負担している。これは電力炭素税に他ならない。
わが国は、エネルギー諸税、温暖化対策税さらにFIT賦課金等が電気料金にかかっており、今後、再生可能エネルギー大量導入が実現すると、今でも世界最高水準の電気料金が更に高騰すると予想される。
その結果、産業が国際競争力を失えば、労働者の賃金切り下げにとどまらず、国内撤退に追い込まれれば地域の雇用も失われる。
われわれは、カーボンニュートラルという「坂の上の雲」を仰ぎ見、長く険しい道のスタートを切ったばかりだ。
11世紀末から200年間、バチカンが掲げる「聖地エルサレム奪回」という宗教的熱狂の十字軍遠征のさなか、国益の観点から、敵サラセンとも交易を続けたべネチア共和国の「したたかさ」を今こそ学ばねばならない。(「海の都の物語」塩野七生・著)
2021年1月4日号 週刊「世界と日本」第2188号 より
《さわだ・てつお》
1957年兵庫県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、三菱総合研究所に入社。ドイツ・カールスルーエ研究所客員研究員などを得て、91年から現職。中・高校生向け講座も多く開催。専門は原子核工学、核融合システム安全など。著書は『御用学者と呼ばれて』など多数。
原発はトイレなきマンションか
東京工業大学助教 工学博士 澤田 哲生 氏
原発を揶揄し原発に反対する言説が「(原発は)トイレなきマンション」である。
この言説が日本に最初に紹介されたのが1950年代の後半である。当時そもそもは原子力の推進者だったのが強烈な反対派に舵を切った物理学者・武谷三男が米国から輸入したのであった。したがってマンションとは〝大邸宅〟のことである。
この言説は、今でも原子力に慎重な姿勢を示す人々の間でよく共有されている。
トイレつまり高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分場の建造は原子力を利用する全ての国の課題である。原発のトイレの建設にいち早くこぎつけたのは、2015年、北欧のフィンランドである。この廃棄物処分場は通称〝オンカロ〟と言われる。フィンランド語で大きな「穴ぼこ」の意味である。
元首相の小泉純一郎氏は、2013年にこのオンカロを現地視察し、「オンカロのような処分場は日本でとてもはできない」旨を言ったとされる。しかし、なぜ彼がそう思ったのか、その理由は全く定かでない。
私は、2019年にこのフィンランドのオンカロと隣国スウェーデンの処分予定地を続けて視察した。私が真っ先に思ったのは「オンカロは日本でもできる」だった。小泉氏とは真逆の判断である。
私は、岐阜県瑞浪市と北海道幌延町にある処分場の試験施設にある地下300メートル以深の坑道を幾度となく視察した。そこで見聞きしたものとオンカロで見聞きしたものはなんら違いが見当たらなかったのである。
日本では2000年に核のごみの地層処分を促進する法律ができた。それから20年、処分場の建設への道のりは、スタートにも立てないままの足踏み状態が続いた。唯一2007年に高知県東洋町が最終処分場の候補地選定に向けた国の選定プロセスの第1段階であるいわゆる「文献調査」への応募があったが、地域住民の支持を得られず調査開始には至らなかった。
そこへ来て2020年8月14日に北海道寿都町の片岡春雄町長が文献調査への応募を検討している動きが表面化した。続いて9月8日には、近隣の神恵内村の商工会が文献調査への応募検討を求める請願を村議会に出した。
その両町村や道内では、様々な反対の動きが湧き上がった。特に寿都町にはわざわざ件の小泉氏もお出ましになって反対の弁を繰り広げられたのである。
しかし、その後10月上旬に両町村が相次いで文献調査への応募・受け入れ受諾を表明し、11月17日に文献調査を開始することが決まった。処分場の選定プロセスは3段階からなる―文献調査→概要調査→精密調査である。各調査が終わった時点でその次の段階に進むか否かが判定される。選定の全体プロセスは約20年かかるという。
では文献調査とは何か?
調査を実施するNUMO(原子力発電環境整備機構)によれば、文献調査ではその地域の地質図などの文献・データ、地質などに関する学術論文などを収集し、情報を整理する。それらの情報をもとに、地層の著しい変動がないこと、最終処分を行おうとする地層に有用な鉱物資源がないこと、地下施設の建設が困難となるような強度の弱い地層がないことなど、施設建設地としての不適切な地層状況がないかを確認するという。文献調査に要する期間は約2年である。
私はさるご縁があって、神恵内村の髙橋昌幸村長にリモートではあるが直接話を伺う機会を得た。まず神恵内村では村内の商工会から文献調査への応募を求める請願があり、村民の代表である村議会がそれを受けて賛成多数で決議した。10月8日のことである。
その間村内外の人々による反対運動も展開された。
しかし、11月には村のPTA連合会主催で小学生、中学生を対象とした勉強会があり、この問題を議論しなければならない必要性についてしっかりと対話の機会を持たれたという。これまでにも村では小学生などを対象に、原子力発電所などのエネルギー関連施設を訪問し視察研修を行っていたという。
学校教育はもちろんスポーツ振興にも力を入れてきたとのことで、卓球では小学生が全国大会にまで出られるようになったという。しかし、2020年の大会では選手が「核のごみの神恵内村」と言われたと聞いて大変胸が痛んだという。
文献調査に伴う交付金が出ることでややもすれば金目当てではと批判される。しかし村長の口からは、核のごみの処分という極めて重い問題は、20億円で引き受けられるような話ではない、心外ですときっぱりと仰った。むしろ、私たちの村が受諾したことをきっかけとして、電気という恩恵を受けている国民一人ひとりがこの核のごみの問題を考えるようになることを強く願うという。そして、多くの人々がこの問題をよりよく理解する機会があり、全国各地で調査を受け入れてくれるところが出てくるようになって、その中で最適地を選んでいただくのが良いのだろうとも。
私は髙橋村長に直接接して、その穏やかな表情と物腰の中にも強固な意志と正義感を感じた。神恵内村は明治から昭和にかけて、ニシンの豊漁で湧いた。神恵内村がニシンの水揚げで日本一になることが幾度もあったという。当時最盛期で北海道から100万トンのニシンが水揚げされた。昨今日本の年間漁獲量は約400万トンである。このようにかつては日本の食料の重要な部分を支えた神恵内が今度は日本のエネルギー安全保障の基本問題に一石を投じたのである。
核のごみの処分の問題は私たち一人一人の問題である―もはや傍観者ではいられないし、小泉氏のような無責任な発言は許されない。
神恵内村と寿都町の理性と冷静な判断は、私たちに日本の将来にとってあるべき公共精神とは何かを問いかけていると私は思う。
2019年3月18日号 週刊「世界と日本」第2145号 より
《さわだ・てつお》
1957年兵庫県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、三菱総合研究所に入社。ドイツ・カールスルーエ研究所客員研究員などを得て、91年から現職。中・高校生向け講座も多く開催。専門は原子核工学、核融合システム安全など。著書は『御用学者と呼ばれて』など多数。
現地リポート
『大間原子力発電所』訪問記
東京工業大学助教 工学博士 澤田 哲生 氏
本州最北端のまち、青森県大間町。大間といえばマグロ。そこには、最新鋭軽水炉の原子力発電所がある。“もんじゅ”亡き後の希望の星がいま、この地に姿を現しつつあるのだ。絶滅の危機が心配される「マグロのセキュリティ」と「エネルギーのセキュリティ」の象徴がここにある。今回、原子核工学の研究者で東京工業大学助教の澤田哲生氏が、1月31日から2月1日にかけて、初めて現地に入った。「大間原発とは何か、そして、その持つ意味とは」の訪問リポートをお届けする。
建造がストップして丸8年の現状
原子力エネルギーのセキュリティといえば「核燃料サイクル」であり、大間に造られつつある原子力発電所はその中核である。
それはなぜかというと、フルモックス(Full MOX)といわれ、プルトニウムをウランに混ぜた「混合酸化物燃料(MOX)」を、100%(full)まで装荷できるからである。
軽水炉でMOX燃料を用いることを「プルサーマル」というが、その場合は、炉心全体の3分の1しかMOX燃料、つまりプルトニウム燃料を用いない。
地吹雪の大間原子力発電所サイト
私が大間原発に踏み込むのは初めてだった。初めて行くなら、ぜひとも厳冬期に行きたいと思っていたが、それがかなった。前日の1月30日に現地入りしたが、東北新幹線の七戸十和田駅から大間町までの行程は車でゆうに3時間はかかる。その途中、ちょうど中間地点あたりに六ヶ所村がある。
寒波が襲来していて、雪が激しく降る。時には雲間からうっすら日が差すなど猫の目のように変わる天気だった。地元の皆さんには悪いが、内心“望むところだ”と呟いていた。風が強く、地吹雪が舞う。あっという間にホワイトアウトで前の車がスーッと消えて行く。
初めて見る大間原発サイトは町役場からすぐそこにある。直線で2キロメートルもなさそうな距離だ。
サイト内には視察用の展望お立ち台が何カ所かに設置されていた。吹雪が激しく強風が吹き荒れると、お立ち台に立つことも難しい。吹き飛ばされかねない強風だ。吹雪と吹雪の間隙を縫って、ようやくお立ち台に立つことができた(写真1)。
お立ち台から眼にしたのは大荒れの津軽海峡。白い波頭が無数に暴れている。その海原を背景に、今現在の建造率が38%で、建造途中の原子炉建屋、さらに関連する組み立て中の大型部材、事務棟などが吹雪の向こうに見え隠れする。
建造中の建屋の中に入る。まず眼につくのは、養生、養生、そのまた先も養生。鉄筋などの金属製の部材は、錆びないようにビニールとテープなどでしっかりと包まれている。しかし、建造がストップして、もう丸8年が経つという現状が、そこにはある(写真2)(写真3)。
なぜ? 普賢の代替物が大間に
今から35年前の1984年、大間町議会は原子力発電所の誘致を決議した。当時、科学技術庁が中心となって開発していた「新型転換炉(ATR)」の“実証炉”を建設する計画となった。ATR原型炉ふげんが敦賀半島で、順調に運転実績をあげていることを受けてのことだった。
原型炉から規模を大きくして、さらなる信頼性を確証するのが実証炉である。「ふげん」は普賢菩薩にちなんだ名称で、高速増殖実験炉「もんじゅ」(文殊菩薩)と並んで、わが国の核燃料サイクル政策を推進する両輪をなすものであった。
ATRはAdvanced Thermal Reactorの略で、その炉で燃やせる核燃料はバリエーションに富んでいる。天然ウラン、プルトニウムを混ぜた天然ウラン、微濃縮ウラン、そして混合酸化物燃料(MOX)である。さらに、炉心燃料の全てをMOXにするフルモックスも可能であった。
またATRでは、天然ウランや微濃縮ウランも使用できるので、燃料製造過程で発生する劣化ウランの量を大きく低減させることも可能だ。従って再処理によって取り出すプルトニウムを、効率よく利用する原子炉として期待されていたのである。
しかし、1995年、経済性の観点から「改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)」に計画が変更された。その後、用地買収に難航するなどの困難を乗り越え、原子炉の搬入直前までたどりついた矢先に「3.11福島第一原子力発電所事故」が起こってしまった。
それまでは原子炉メーカーやゼネコン及びその協力会社の作業員が1700名いたが、今では品質維持点検や保守点検などのために数百名が現地に留まるのみといった寂しい状況である。黙々と業務が続けられるなか、早く以前のような活気が戻ることを期待する声も地元にはあると聞く。
厳冬期にもなれば津軽海峡からは、時には風速10メートル/秒もの風が吹き付けることもある。氷点下での作業は極めて厳しい。そのために、鉄骨が組まれた原子炉建屋全体をカバーで覆う「全天候型建設工法」を採用している。
厳しい自然環境に対応するため、格納容器などの大型のモジュール(部品)は、ある程度まで別の場所で組み立てて実際の据付場所に持ってくる。これを「大型モジュール工法」と呼ぶ。これにより建造の効率化もアップする。
(写真4)の日立マークのドームの中では格納容器の一部となるトップスラブモジュールが組み立てられている。
その右隣のカマボコ型ドーム内には主蒸気管や給水管等の配管類に制振装置と柱・梁・床がセットになったドライウェルモジュール(約650トン)が、シートで厳重に養生され湿度管理して保管されていた。
大間の地に原子力の火が灯る日
原子力委員会
2018年にプルトニウムの平和利用を眼目とした「日米原子力協定」の自動延長がなされた。そして7月31日、日本の原子力委員会はプルトニウム利用の基本的な考え方を発表した。その5項目のうち前置きと第1項目は以下のように記されている。
◇ ◇
わが国は上記の考え方(利用目的のないプルトニウムは持たない)に基づき、プルトニウム保有量を減少させる。プルトニウム保有量は、以下の措置の実現に基づき、現在の水準を超えることはない。
(1) 再処理等の計画の認可(再処理等拠出金法)に当たっては、六ヶ所再処理工場、MOX燃料加工工場及びプルサーマルの稼働状況に応じて、プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う。その上で、生産されたMOX燃料については、事業者により時宜を失わずに確実に消費されるよう指導し、それを確認する。
◇ ◇
同時に、かつて日本から使用済み燃料を海外(英仏)に託して分離したプルトニウム47トンについても、“着実な削減に取り組む”とされている。
プル燃料消費の中核
このようにプルトニウムの積極的な利用が求められているのが昨今の現状だ。しかるに「沸騰水型軽水炉(BWR)」の再稼働は遅々として進んでいないという現状もある。
六ヶ所の再処理プラントはその完成時期が2021年とされている。竣工しても、いきなり100%で稼働することはなく、3~4年かけて、じっくりとフルスペックの稼働に持っていく。
フルスペックでは年間800トンの使用済み燃料を再処理することが可能になる。そうすれば、年間8トンのプルトニウムが抽出される。しかし、それはプルトニウム全体の量であり、燃料として有用な核分裂性のプルトニウムは4・8トン程度になる。これをプルサーマルで消費することで需給バランスがとれるということになる。
プルサーマル炉が12基の再稼働申請がなされている中で、大間は年1.1トンのプルトニウム消費が可能である。伊方原子力発電所は年0.5トン程度のプルトニウム消費が可能であり、その他のプルサーマル炉も0.3~0.4トンのプルトニウム消費が可能である。
終わりに
このように高速増殖炉「もんじゅ」亡き後、大間のABWRは核燃料サイクルの中核的かつ象徴的な原子炉となる。プルトニウムサイクルの均衡を維持していくために、欠くことのできないシステムなのである。
資源のないわが国にとって原子力を進めることは、核燃料サイクル技術を実用展開することなくしては意味をなさない。そのことはすなわち、プルトニウム利用技術を完遂させることである。
大間の地に原子力の火が灯る。その暁には、この大間町が世界初のフルモックスの成功をもって世界に有名を馳せる日がくるのである。
厳冬期の地吹雪の中、日々現場で精力的に頑張っているスタッフにエールを送りつつ、大間に原子力の火が灯る日が一日も早く来ることを願う。
2018年7月16日号 週刊「世界と日本」第2129号 より
《さわだ・てつお》
1957年兵庫県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、三菱総合研究所に入社。ドイツ・カールスルーエ研究所客員研究員などを得て、91年から現職。中・高校生向け講座も多く開催。専門は原子核工学、核融合システム安全など。著書は『御用学者と呼ばれて』など多数。
今、瀬戸際にある「エネルギー安全保障」
見えにくい、わが国の「原子力の行く先」
専門家とメディアは“情報共有”惜しむな
東京工業大学助教 工学博士 澤田 哲生 氏
「第5次エネルギー基本計画」が閣議決定された。今回も原子力発電所のリプレース・新増設の文言が明示的に盛り込まれることはなかった。そればかりか、原子力の依存度を可能な限り下げるという意志は残されたままである。電力事業者には、古株の原子力発電所を新規制基準にあわせて再稼働させる経済的体力も大義も、もはやなくなっている。このままいけば、2030年の原発発電比率は10%台に届くかどうかの瀬戸際で、やがて時とともにフェードアウトしていく運命にある。
国家安全保障の要
前述の状況は、この東アジアの地政学が急速に変化しつつある中で、日本のエネルギー安全保障を危うくするに他ならない。
3.11後急速に増えた太陽光発電は、自国産のエネルギーとしてその意義は大きい。しかし、過去7年でドイツを追い越し、中国に次ぐ世界2位の設備容量を誇るも、そこから絞り出される電力は発電量の実績で、わが国が必要とする総電力のわずか5%に過ぎない。
また、太陽光発電には2019年問題(編集註=2009年開始「余剰電力買取制度」の10年間の買取期間が満了。その後は・・・)という難所が待ち構えている。
そのようななか、東京電力は「福島第二原子力発電所の廃炉」を事実上決めた。私は地元の、特に若者の間に、いまだ根強い第二原発復活再稼働の待望論があることを知っている。
歴史を振り返れば、原子力発電所の計画から稼働までには悠に30年はかかる。今、リプレース・新増設の計画を具体化し、制度的な枠組み、つまり、低炭素発電電力の差金決済取引による「固定価格買取制度(FIT-CfD)」などを、施策に落とし込まなければ、この国のエネルギー安全保障は立ち行かなくなること必至である。
原子力は日本のエネルギー安全保障の鍵であり、エネルギー安全保障は国家安全保障の要である。しかし、今次のエネルギー基本計画を見ても、この国の原子力の行き先は、あたかも霧に遮られたごとく実に見えにくい状態に今はある。
桜並木は残った
今年、桜の咲く頃に福島第一原子力発電所を再訪した。2つの象徴的な驚きがあった。1つは、事故直後に「いずれは全部切らざるをえない」と言われていた桜の並木を目にしたこと。桜ノ木は残ったのである。
もう1つは、事故で破損した1号機から4号機を見下ろす高台に普段着のまま立つことができた。強烈な水素爆発を被った3号機の建屋の屋上部分には、巨大なカマボコ風の建造物ができた(写真1)。ここは一般の見学者も中に入れるという。
この時この展望台の空間線量は12.2μSv
/h(マイクロシーベルト/時)であった(写真2)。ほぼ普段着でこの位置にバスから降りて立つなど1年前には考えられないことだった。
凍土壁と汚染水
汚染水対策の要である凍土壁は所与の設計通り完成した。これによる汚染水の発生量は大幅に減少した。凍土壁が完成すれば汚染水がなくなるというのは勝手にとりざたされた風説、つまり風評である。凍土壁が完成しても汚染水はゼロにならないことは、はじめから分かっていたことである。
凍土壁の汚染水削減効果は日々100トン程度である。かつては毎日500トン程度発生していた汚染水が、今は150トン程度になっている。350トンの削減である。ではこの差、つまり350-100=250トンはどういう仕組みで減ったのか。そのからくりは、“地下水バイパス”と“サブドレン”にある。
地下水バイパスは、原子炉一帯よりもはるか上流の山側に多数の井戸を掘って、地下水をくみ上げて海へと、バイパス放出する仕組みである。
一方の、サブドレンは、凍土遮水壁の内側にやはり多数の井戸を掘って水をくみ上げて、いったんタンクに貯蔵して海に放出する。どちらも、直に海に放出するのではなく、くみ上げた水に混じっているセシウムや、トリチウム(三重水素)の濃度を管理し放出している。
セシウムは1ベクレル/リットル、トリチウムは1500ベクレル/リットル以下になるように水で薄めて放出する。ベクレルは放射線をどのくらい出すか、つまり放射能を表していて、1ベクレルなら1秒間に1個の放射線が出てくる、ということである。
「トリチウム水」考
トリチウム水といっても純度100%ではない。大半は普通の水素(H)と酸素(O)からの水(H2O)で、そこにわずかだがトリチウム、つまり三重水素(T)1個と水素1個に、酸素からできたトリチウム水(HTO)が混じっている。トリチウム(T)は水素(H)の仲間である。同位体という。
このようにトリチウムは水素の一種なのだが、問題は、トリチウムがβ線(電子)という放射線を発する放射性物質だということだ。その発射量が半分に減る時間(半減期)は、12・3年である。
全てがHTOでできている純度100%のトリチウム水は、1グラムで約55兆ベクレルの放射能を持っている。そしてトリチウムは、地球環境のどこにでも存在する。また、世界中の原子力発電所から日々放出されているが、希釈管理して放出されている。
ロンドン条約に則って、各国はトリチウム濃度を6万ベクレル/リットル以下に薄めて海洋に放出しているが、東電は、40倍も厳しい基準を独自に適用しているのである。
問題は、福島第一原発のサブドレン水(=トリチウム水)は、かなりの昔から管理して海に放出しているのに、それと濃度の差しかない「汚染水」を、いまだにタンクに貯めこみ続けていることである。つまり、海洋放出のめどが全く立っていないということなのだ。
重ねて言うが、汚染水に混じっていたセシウムやストロンチウムなどは、すでに除去され、残っているのは事実上トリチウムだけである。汚染水を希釈してトリチウムを1500ベクレル/リットル以下にすれば、どこからどう見ても“すでに海に流している”サブドレン水と何も変わらないのである。
原子放射線の影響に関する「国連科学委員会(UNSCEAR)」によれば、この地球上のトリチウムの総量が出す放射能は、約1,275,000兆ベクレルである。莫大な量に見えるかもしれないが、これを全て純度100%のトリチウム水に換算すれば、わずかに約23キログラム(23リットル程度)にしか過ぎない。
ではいったい今、福島第一原発にある汚染水に含まれるトリチウム水の量は如何程なのであろうか? それはほぼ1000兆ベクレルであり、その重さは約18グラム(18㏄)である。小振りのお猪口(ちょこ)1杯程だ。
もう1つ参考になるデータがある。世界中の原子力発電所や再処理施設では日々トリチウムが発生しているが、それは管理され適宜希釈されて環境に放出されている。例えば、英国やフランス、そしてカナダの施設からは、次のような量のトリチウムが海洋に放出されている(表1参照)。
ブルース原子力発電所(カナダ)には合計8基の原子炉がある。これらはわが国の軽水炉とは違って、いずれも重水を大量に用いるタイプの原子炉(CANDU炉という)なので、トリチウムが多く発生する。
いずれにしても、これらの施設からは、現在福島第一原発の敷地内に貯留されている総トリチウム量(約1000兆ベクレル)に相当するかそれ以上の量が、日常的に海に流されているのである。つまり科学的かつ技術的に見れば、福島第一原発のトリチウム水を特別扱いする理由はない。
汚染水タンクは今後137万トンまで増設予定であるが、それも今のペースで増え続けると、あと5、6年で満杯になる(写真3)。それまでには何としても、たまり続けるトリチウム水問題に目鼻をつけて、海洋放出を実現しなければならない。
再度、その要目を挙げる。
(1) トリチウム水は国際基準に沿って希釈して、海洋放出するのが世界の常識
(2) すでにサブドレン水はトリチウム濃度を管理して海洋放出している。希釈すればサブドレン水とトリチウムを含む汚染水に何ら差異はない
(3) 諸外国には、今、福島第一原発に貯められている総トリチウム量を超えるトリチウムを海洋放出してきた歴史がある
風評被害=100べクレルの轍(わだち)
トリチウム水を希釈して海洋放出するにしても、それが風評被害を引き起こさないかという危惧がなかなか払拭されない。
そこには苦い経験がある。2011年晩秋に、民主党政権当時、時の厚労大臣小宮山洋子氏のもと、食品中の放射性物質を規制する基準値が12年4月から新たに見直し設定され、米や野菜、肉などは、これまでの1キログラムあたり500ベクレル(暫定規制値)から100ベクレル(新基準値)に引き下げる、という方針が決まった。
これは福島の生産者の方々や専門家の意見を背景にしたものであった。しかし、国際的な基準である500ベクレルよりも引き下げられたために、消費者の間にかえって深刻な不安を巻き起こした。
12年2月16日、文科省の放射線審議会は紛糾を繰り返した後に、次のような批判的な答申を出した。「食品の放射性セシウムの濃度は十分に低く、(新基準値が)放射線防護の効果を高める手段にはなりにくい」
ポイントは、(1)出荷制限という管理のための値であること、(2)なぜ5分の1なのかの理由、(3)食品中には常に普通に放射性物質が含まれていること、である。これらを、政府も専門家も、迅速かつ丁寧でわかりやすく人々に伝えることを怠った。
そして、マスメディアの良心的記者も、これらのことをあまりよく理解せずに記事を書いてしまっていたという。国の無能無策を脇に措くにしても、専門家やメディアの不作為ともいえる言動が人々をして、無用の不安の淵に追い込んだ責は大きい。
トリチウム水問題にあっては、同様の轍を踏んではならない。この問題における専門家とメディアは協力し、丁寧な説明と情報共有のために努力を惜しんではならないと思う。
もう1つ気になることがある。最近原子力規制委員会が、東京電力の社長に対して、トリチウム水への具体的な取り組みが遅きに失している、と攻め立てるように詰問しているが、これはおかしい。
今や東京電力は、もはや単なる私企業ではなく、国、すなわち経産省資源エネルギー庁の肝煎りである。国の指導なくして東電はもはや何もできない。見苦しい社長いじめなんぞに労力を使わず、むしろ国同士で直接協調的にこの問題に向き合うのが正道であろう。
「2020年東京オリンピック」に向けて、トリチウム水問題に正道を持って目鼻をつけることが、この国の覚悟を世界へ示すことになるのではないか。
トリチウム水というタブーに挑み、道を開くことが、福島第一原発の廃炉措置の未来を拓く一里塚であり、それなくして日本の原子力の未来にかかる霧は晴れないと、ここに断言する。
2018年4月2日号 週刊「世界と日本」第2122号 より
日本を救う道は再エネと原子力
原発稼働の収益を「再エネ」促進に
NPO法人 社会保障経済研究所代表 石川 和男 氏
《いしかわ・かずお》 1989年、東京大学工学部卒業、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー、産業保安、消費者保護など各般の施策に従事、2007年退官。08~09年、内閣官房企画官。規制改革会議専門委員、東京女子医科大学特任教授、政策研究大学院大学客員教授、東京財団上席研究員などを兼任。11年から、NPO法人社会保障経済研究所代表、現在に至る。
エネルギー政策面で日本がよく参考にするのは、イギリス・フランス・ドイツである。最近特に、日本のメディアが多く取り上げるのはドイツ。風力や太陽光など再生可能エネルギーを率先して導入し、かつ、脱原子力を明言しているからだろう。ドイツは2022年までに全ての原子力発電所を閉鎖することを決めている。そのためか、日本では、「ドイツは進んでいる」「ドイツを見習おう」という報道がよく見られる。
ドイツには、温室効果ガス(CO2)の排出量に関して、2020年までに1990年比で40%削減するとの20年目標というのがある。今、ドイツは20年までにCO2を30%までしか削減できない見通しなのに、「22年原子力ゼロ化」は必ず実行すると固く決意している。誰に聞いても、この決意には揺るぎないものがある。
CO2が出ない原子力をなぜやめるのかと聞くと、「それはそれだ」という答え。「CO2削減」と「原子力ゼロ化」は別問題で、脱原子力は何をおいても絶対に達成する目標なのだそうだ。
アメリカのスリーマイル島、ソ連のチェルノブイリの事故が起こり、この2大国ですら原子力事故が起きた。それ以降、ドイツは原子力に拒否反応を持ち始めた。そして、日本の福島第一原子力発電所(1F=イチエフ)の事故が起こった。それからわずか2カ月後、22年原子力ゼロ化を発表。
ドイツは石炭が豊富に産出される国で、消費電力の4割を担っている。ドイツは再エネを推進していて、月額2500~3000円の再エネ賦課金を国民に課して、CO2削減を声高に言いながら、原子力をやめて、石炭も続けて、結果的にCO2が増える政策を採る。果たしてドイツは、本当に「エコ大国」なのか?
フランスはどうか。15年に前オランド政権が、再エネ発電比率を40%にまで高め、さらに25年には原子力発電比率を75%から50%に引き下げることを決めた。マクロン政権もこれを引き継いだ。だが昨年11月、関係閣僚が「25年までに原子力発電の割合を75%から50%にするのは難しい」と発言。そして石炭は21年中にやめることを宣言。フランスは、脱原子力よりもCO2削減を選択したわけだ。
イギリスはどうか。ドイツやフランスとは違い、25年までに全ての石炭火力発電所を閉鎖し、天然ガス、洋上風力、原子力に切り替えることを目標にしている。
アメリカでは、トランプ政権になり、原子力はやる、石炭も進める、太陽光などの再エネもやる、となった。トランプ政権の考えは、「世界のエネルギー需要は増加する。アメリカも増える。だったら全方位でやっていけばいい」という単純明快なもの。
EUは28カ国あって事情は各国さまざまだが、全体を見れば脱原子力でも、脱石炭でも、脱石油でもなく、再エネはもちろん推進していく、というもの。東南アジアでは、原子力と天然ガスが増える見込み。ロシアも中国も原子力開発を進めていく予定。
日本のメディアは「脱原子力は世界の流れ」とよく書き立てるが、それは大間違い。脱原子力を明確に宣言している大国はドイツくらい。むしろ、欧米、中国、ロシアでは、小型炉(SMR)、高速炉、高温ガス炉など、より高い安全度を謳った革新炉の開発に、さまざまな主体が取り組んでいる。
世界の原子力発電量は1F事故の影響で10年から12年にかけて、いったんグッと減ったが、その後は緩やかに増加傾向で、それが続いていくというのが世界の見通し。
日本では、1F事故を受けて新しい安全基準を設けた。規制の常識では「〇〇年以内に基準を合格するように」という猶予期間がある。だが日本はそうではなく、発電を停止させて、基準をクリアするまで発電させないとの運用。そんな国は日本だけだ。
前民主党政権時にこれを決めて、野党の自民党は何も言わず、与党になってからも何も改善していない。原子力発電再開が遅れているのは、電力会社のせいではない。明らかに政治と行政の責任だ。
1F事故から17年3月末まで、日本国民は1人当たり12万円、総額15.5兆円という巨額の化石燃料の追加負担を強いられてきた。消費税1%で2.5兆円。消費増税のために何回も総選挙までやったのに、原子力発電停止による追加負担については、産経新聞以外はほとんど報じない。
アメリカでもソ連でも、スリーマイル島、チェルノブイリの事故後も、事故炉以外の原子炉は止めていない。そもそも、事故炉でない原子炉の安全性は、事故とは無関係。
日本の政治家は、こういう話を表ではしない。与野党の大半の議員は、「原子力は票にならない」「むしろ話をすると票が逃げる」と言う。表面上では電気は足りているのだから、原子力の話には触れない方がいい、ということ。だが、“安い電気”は全然足りていない。
「票にならない」「票が逃げる」というのは、政治家の思い込みだ。現に自民党も公明党も、基準をクリアしたものは再稼働していくことを公約に載せ、安倍政権になってから国政選挙には連戦連勝。それでも、与党議員の多くが原子力政策を議論するのを避けているのが、原子力問題の大きな問題点の一つだ。
もう一つ問題点がある。私は、再エネと原子力は同時に進めていくべきと考えている。だが、「原子力ムラの人」は自分たちが世界一のエネルギーで、まだ技術が進んでいない再エネを完全に蔑視する。逆に、「再エネムラの人」は原子力を憎悪すべき汚い存在であるかのように嫌悪する。お互いに一緒にやっていこうという姿勢は一切感じられない。
大手メディアの多くは、再エネについては礼讃記事ばかりで、原子力関連は極端な粗探しや非難の報道ばかり。批判は大事だが、このままでは、原子力産業界に新しい技術者が入らなくなる。現にずいぶんと減ってきている。原子力発電所を安全にやめていくための人材がいなくなりつつあることを憂い、どう克服するかをきちんと考えていくべきだ。
廃炉事業は数十年以上かかる。その数十年間は電気をつくれないから、収入がない。そのために今のうちから必要な資金を貯めておかなければならない。だが現在、電力会社はギリギリの状態である。今後、こうした負担が電力会社の経営をさらに厳しくするかもしれない。経営が厳しくなれば、電力会社は、電気料金を上げざるを得ないだろう。
原子力発電所を安全に廃炉にしたいのなら、今、原子力発電を早期に再開し、当初予定通りにヒト・モノ・カネを確保していかないといけない。同時に、原子力発電を高い稼働率で稼働させて得られる収益を、再エネ導入促進のための送電網整備や技術開発に当てれば、「再エネは高い」という批判に対して堂々と反論できるようになる。
悪しざまに原子力批判だけを繰り返していては、結局は自分たちの首を絞めることになる。本当は、それをメディアは分かっているはず。原子力をフル活用しながら、コストの合理的な再エネ導入に邁進する―それが資源なき日本の新しい国是ではないのか。
2018年2月19日号 週刊「世界と日本」第2119号 より
沸騰水型軽水炉
再稼働はいばらの道
東京工業大学助教 工学博士 澤田 哲生 氏
3.11から間もなく丸7年が経とうとしている。しかし、原子力発電所の再稼働は遅々として進んでいない。とりわけ「BWR(沸騰水型軽水炉)」は、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機が審査に合格したものの、いまだに1基も動いていない。それはまさに国家的損失という他なく看過できない。日本のエネルギー安全保障の観点からもBWR再稼働は急務である(※「注」参照)。しかし、BWRの再稼働の前途には大きな困難が待ち構えている。いばらの道である。そのことを2人の人物を手掛かりに解き明かしていく。1人は新潟県知事の米山隆一氏であり、もう1人は弁護士の河合弘之氏である。
新潟県の3つの検証委員会
昨年12月27日に原子力規制委員会は、新潟県にある東京電力の柏崎刈羽原子力発電所6、7号機が、新規制基準に正式合格したとする審査書案を了承した。それに対して新潟県の米山隆一知事は、再稼働に極めて慎重な態度を取っている。国は良しとしたが、地域は頑として頷首(がんしゅ)しない構えである。その結果、実際の再稼働の時期は、少なくとも向こう3年は見通せないのが現実である。
なぜなら米山氏は、福島第一原子力発電所事故の検証を、新潟県として改めて実施すると宣言している。検証は3本立てである。
(1)事故原因を検証する「技術委員会」(2)住民の健康と生活への影響を検証する「健康・生活委員会」(3)安全な避難方法を検証する「避難委員会」。なお前任者である泉田裕彦氏の県政時には、技術委員会のみ設置されていた。これら3本立ての検証委員会が正式に発足したのは昨年9月であり、米山県政発足からすでに1年が経とうとしていた。
検証ロードマップの時間軸は定かでないが、今後2年程度をかけて実施する目論見である。つまり検証をもって再稼働を2年以上蹂躙(じゅうりん)する算段と見える。さらに、検証結果は、再稼働の諾否に関する“両論併記”になる可能性が高いことを知事自身が認めている(『エネルギーフォーラム誌』2018年1月号「米山vs.澤田特別対談」)。
では最終的に再稼働の諾否を誰がどのようにして決断するのか。
米山氏は、民主的プロセスを経てしっかりとした根拠に基づいて意思決定をするといい、その恐らくは自らが下すであろう“決断”に、県民が納得感を持つことが大切だとしている。
民主的プロセスがどういうものかについては今のところ全く明らかにされていない。時間の経過は予想以上に速いかもしれない。そして“決断”が下る頃にはもう次の県知事選が目前に迫る。3つの検証と決断を、次の県政への橋渡しにしようという目算があるのではないか・・・と勘ぐらざるを得ない。
辣腕弁護士と規制委リスク
昨年12月13日、広島高裁は、伊方原子力発電所3号機の運転差し止めを求める仮処分を決定した。その仮処分を求める住民訴訟団を弁護したのが河合弘之弁護士である。河合氏と最近会ったのは、脱原発の論客である飯田哲也氏らとの対話トークの席上であった。
1月24日の午後7時から2時間ほど都内で実施した。その機会に、私は2つのことを河合氏に質した。(1)広島高裁の仮処分決定は規制委員会の“オウンゴール”だが、敢えてそこを狙ったのか、そして(2)今後の運転差し止め戦略や如何である。
広島高裁は原子力規制委員会の火山ガイドの不備を衝いたわけだが、“オウンゴール”は日経新聞の編集委員滝順一氏が紙面で以下のように解説した。
◇ ◇
広島高裁の判断に先立って広島地裁や福岡高裁宮崎支部の決定があった。どちらも、阿蘇山のカルデラ噴火のような破局的な噴火は発生頻度が著しく小さいうえ、国も防災計画をもたず、国民の間に目立った不安もないので、そのようなリスクは社会的に容認しうるというのが「社会的通念」だとし、運転差し止め請求を退けた。・・・(中略)・・・安全審査の内規として原子力規制委が作成した「火山影響評価ガイド」を厳密に運用すれば、そうした判断は「限定解釈」であり「許されない」と結論づけた。これは東京電力福島第一原発事故の教訓として、安全確保のため規制基準の順守には手心を加えないとの姿勢を示したものだと理解できる(「日本経済新聞」電子版2018/1.7/6:30)。
◇ ◇
火山影響評価ガイドに不備があることは、伊方以前の川内原子力発電の訴訟の過程でも指摘され、規制委員会はそれを正すのに十分な時間があったにもかかわらず、そうしなかった。よって伊方の差し止めは、規制委のオウンゴールの側面があると滝氏はいう。
広島高裁の決定に対して、原子力規制委員長の更田豊志氏は「個別の民事訴訟に関して、コメントする立場にない。したくないのではなく、するべきではないと思っている」(12月13日の定例会見)と述べた。
なんとも心もとない言いぐさである。無責任である。再稼働の前には司法リスクが蔓延するやに言われることがあるが、これはもう「規制委リスク」というべきものである。
さて、河合氏に向かって「オウンゴールは狙って打った結果か?」と聞いたところ、「そうではない。かなりラッキーだった」という旨の答えだった。そして、今後の差し止め戦略は如何との問いには、いずれの原子力発電所に対しても、幾重にも渦巻きを成すがごとく“重層的に”、住民訴訟の攻撃隊列を組んでいくという答えであった。
これから何が起こるのか
PWRの再稼働トップランナーは川内原子力発電所であった。後に続くPWR各社(関電、四電など)は、トップランナーの拓いた轍をたどらざるをえなかった。今後BWRもそうなるのであろう。BWRのトップランナーは新潟県の東電柏崎刈羽6、7号機である。
規制委の火山ガイドのオウンゴールは、福島第一原子力発電所事故の“技術的検証”の中で生み出された矢が射られた結果である。住民訴訟が放った矢が命中したのである。新潟県の残り2つの検証委員会―「健康・生活委員会」、「避難委員会」―の中から第2、第3の矢が出てくる可能性が大きい。とりわけ地域住民の避難に関しては、その実質感のある避難方法、責任の所在など少なからぬ問題を抱えている。
24日、河合氏は対話トークの会場に、予告通り開始から1時間ほどして登場。会場に来る前は都内で催された米山新潟県知事を励ます会に参加していたとのこと。脱原発派住民に推されての知事当選であったから当然といえば当然だが、米山知事と河合弁護士の信念は互いに固く結ばれている。
河合氏の次なるターゲットは柏崎刈羽6、7号機に向かっていることは間違いない。
(注)現在再稼働中の原子炉は、PWR(加圧水型軽水炉)が5基[441万kw]、審査を経て再稼働の許可を得たのが、PWR7基とBWR2基[990万kw]、審査中のものは、PWR4基にBWR8基[1205.3万kw]、全部で26基である。
その総設備容量は2636.3万kwであり、これは2010年の総設備容量の約50%になる。10年に原子力発電が生み出した電力は総電力量の28.6%であったから、26基すべてが再稼働しても15%程度の発電比率しか達成できない。そうであるにしても、15%のうち6.5%をBWRが占めることになる。
2017年7月17日号 週刊「世界と日本」第2105号 より
現地リポート
『イチエフ(福島第一原発)』訪問記
実質感が持てない復興の現実
中高生の「対話」から将来の創出を
東京工業大学助教 工学博士 澤田 哲生 氏
《さわだ・てつお》 1957年兵庫県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、三菱総合研究所に入社。ドイツ・カールスルーエ研究所客員研究員などを得て、91年から現職。中・高校生向け講座も多く開催。専門は原子核工学、核融合システム安全など。著書は『御用学者と呼ばれて』など多数。
2011年3月11日に起きた、東京電力・福島第一原子力発電所(通称=イチエフ)事故から6年有余の歳月が流れた。そこで今回、事故発生の翌年1月に初めて現場に入ってから、毎年1回は詣でているという、原子核工学の研究者で東京工業大学助教の澤田哲生氏が、さる4月11日に現地で、自らの目で観て感じた、この5年余の変化と、「将来に向けて、今何ができるか」の現地リポートをお届けする。
日進月歩 改善の積み重ね
「“温かいメシ”が食えるようになった。これが一番ありがたい。長く待ち望んでいたことだ」。現場に響く明るい声がした。
3.11の翌年から毎年1回は『1F(イチエフ)』に詣でる。最初に1Fの現場に入ったのは、事故の翌年の1月だった。
当時、海外から「福島第一の4号機の使用済み燃料プールが危機に瀕している。3.11よりもっと大きい悪夢が再来するぞ」という脅しが日々流れていた。「早く逃げろ!」などというフェイクニュース(偽情報)が伝わってきて、慎重派のみならず悲観論と恐怖が世間に渦巻き始めていた。
ありえないことだと思ったが、真実を発信するには、まずは現場を踏破しプールの現状を自らの目でしっかり確かめてから。そういう想いだった。
あれから5年余り。毎年1Fの現地を訪れるたびに、様々な点で改善が積み重ねられてきていることに驚く。あの最も痛烈な水素爆発を起こした3号機も目にするたびに姿を変えている(写真1)。まさに日進月歩である。
常時6000人を超える作業員が現場にいて、良くも悪くも活気がある。初めの頃は作業員の表情も複雑だったが、今や余裕の表情さえ見て取れる。
当初、視察にあたっては防護服に防塵マスクをつけて、厳重そのものの装備を身にまとうのが当たり前だったが、今ではそれらは不要である。構内でも放射線レベルが低いエリアでは、作業員も防護服を着用せず、ごく普通の作業衣に簡易マスクで仕事をしている。
“温かいメシ”は、大熊町でいち早く除染を終えた大河原地区の、極めて近代的で合理化された施設で日々作られている。昨年夏ごろから本格操業し始めた大熊町にある福島復興給食センターで、東京電力自慢の施設でもある。実際に見学して驚嘆した。区画が実に合理的に区切られ、区画間で作業者が行き来しなくても済む。また、衛生管理に細大の注意が払われている。
このセンターは1Fから南西へ9キロの居住制限区域内にあり、日々3000食を1Fに供給する。約100人の地元雇用も生み出した(写真2)。
こうして少しずつではあるが、広大な帰還困難エリアのなかに人々の姿が見える“島”ができつつある。このように「今できること」には、東京電力の実力がいかんなく発揮されている。昔の東電のプライドが少しずつ取り戻されつつあることを実感した。
ただ、「東電の態度が少し変わってきたように思う」と、地元浜通りには違和感を吐露する知人もいる。そこには事故のことが時代とともに風化していく一方で、復興が進んでいない地域が確実にあることや、復興そのものに、なかなか実質感が持てない現実がある。つまり、政治の無力あるいは無責任さと重なって見えてくるものがあるのではないだろうか。
深刻な問題 3つのタブー
見た目の進歩が著しい部分は間違いなくある。その一方で1Fに足を踏み入れる回数を重ねるとともに、どんどんと鬱積するやるせなさにさいなまされる事柄もある。何年たっても解決の糸口が見えてこないものがあるのだ。
事実上ますます深刻になってきている3つの問題がある。それは、「汚染水」「溶融デブリ」「除染」である。いずれの問題にもタブーがつきまとっている。
(1)溜まり続ける汚染水
現在までに、原子炉建屋の周囲に掘りすすめられてきた井戸から地下水をくみ上げる「サブドレイン(下位の排水設備の意味)」という効果と合わせ、かつては1日400トン以上あった汚染水の発生量は、今では200トン以下に減少している。
しかし、凍土壁の凍結が完成しても、毎日50トンの汚染水は発生し続ける。
つまり、現行の汚染水対策が完遂しても、新たな汚染水が発生し続けるのである。
汚染水の問題は、とどのつまりトリチウムの問題である。原子炉建屋から回収される汚染水には放射線を出す63種類の物質が含まれている。そのうちセシウムやストロンチウムなど62種類の物質は除去装置によって取り除かれている。
唯一除去されていないのがトリチウムである。トリチウムとは水素の仲間で三重水素という。これが酸素と結合してトリチウム水となる。トリチウムは放射性物質であり、ベータ線(その正体は電子)を出す。トリチウムは水素と化学的性質が同じなので、水に混じったトリチウム(水)を分離するのは難しく、コストがかかりすぎる。
ただし、トリチウムは私たちの身の回り、つまり環境中のどこにでもある。大気中で宇宙の営みの結果として常に一定量が生み出されている。また、通常に運転している原子力発電所からも出てくる。そういう物質であるから、国際的な取り決めの中で、一定の薄さに希釈すれば環境、つまり海に流して良いことになっている。
ドレイン水と汚染水の差は、トリチウムの濃度の差に過ぎない。これまでに溜まった汚染水、これからも発生し続ける汚染水は、薄めて海という環境に流すしかないのである。そして流して良いのである(写真3)。
(2)溶融デブリの回収
原子炉の炉心燃料が溶けて圧力容器内で流下し、一部は圧力容器を溶融貫通して格納容器の床などに落ち、コンクリートを溶かしてぐちゃぐちゃになっている。溶けた燃料は原子炉内の他の部材(鉄など)も溶かして瓦礫や小石や砂状になっていると考えられている。これをデブリ(debris)という。デブリのタブーは2つある。
(1)すべてを回収することは不可能だといえる。
(2)回収したデブリをどうするかであるが、事実上、1Fのサイトから外に持ち出すことはできないであろう。
これらの問題はいずれも深刻で広く共有しなければならないものであるが、今誰も声を大にして言及していない。(1)と(2)を踏まえれば、1Fの溶けた3基の原子炉は「石棺」にすることも現実的な選択肢のひとつとして浮かび上がってくる。
実はこの問題は、原子力損害賠償・廃炉機構の理事長である山名元氏が、2016年7月13日に公の会議で言及した。しかし、そのことが報じられるや、地元から大きな反発を招き、福島県知事の内堀雅雄氏が15日に経済産業省を訪問して抗議するに至った。その結果、山名氏はこの言及を取り消さざるをえない事態となった。
なぜ(1)なのか?
1979年のスリーマイル島の原子力事故では燃料は約5割が溶けたが、すべて圧力容器の内部に留まった。しかし、実際に回収できたのは97%止まりだった。つまり、回収できないものがあるのである。一方、福島第一では、釜の外にまで漏れ出てしまっている。
なぜ(2)なのか?
いわゆる使用済み燃料は、六ケ所村の再処理施設に移送することができる。使用済み燃料は定型の容器に収まっていて、当然溶けていない。一方、福島第一のデブリは溶けていて不定形である。
こういったものを受け入れる施設は今のところ(そして2020年の最初のデブリ取り出しの頃も)日本にはない。スリーマイルの溶融燃料は、アイダホ州に運ばれ暫定保管されているが、最終的な行き場所は決まっていない。
このデブリの問題は、石棺問題といってもよい。このタブーに正直に向き合わねばならないのは、まずは専門家や学協会であるはずだ。
なぜ、誰も声を上げようとしないのか。結果的に地元住民が蹂躙(じゅうりん)され、苦悩するのは日を見るより明らかだと思う。
(3)地域の除染
そしてもう一つの問題、それは地域住民と最も密接でありながら、彼らを苦しめている除染の問題である。
いわき駅から1Fのサイトに行く途中にも、うず高く積まれた黒いフレコンパックの山並みがあちこちで目に入ってくる。国道6号線から海岸線近くまで、果てしなくこの人工の黒山が連なる光景を目にする。果たしてここまで膨大な除染を行う意味が本当にあったのだろうか。浜通りを照らす陽光はこの暗澹(あんたん)たる黒山を射抜くように降り注いでいた。
その対照に、ある種の怯えに似たものを感じた。事実上“1mSv(ミリシーベルト)まで除染”とした除染特別措置法(正式名称は「放射性物質汚染対処特措法」、2012年1月1日全面施行)がもたらした光景である。
農地に関して言えば、本当は“天地返し”でことは済んだはずである。そうしていれば、黒山がここまで数多く浜通りに出現はしなかったであろう。最後の最後で1mSvまで除染を法案に押し込んだ時の原発大臣・細野豪志氏は、この浜通りの暗澹たる黒山群を目にしているのだろうか。1mSv除染は地域の人々の安心を醸成するのに本当に役立ったのであろうか。
いわゆる空間線量は事故後減り続けているが、それはセシウムの放射能が時間とともに自然に減少していくことによっている。人家の周囲はともかくも、広大な田畑の除染による効果は、実はほとんど見られない。
1mSvとセットにして出された食品の出荷基準値(100Bq/kg、12年4月から施行)がある。民主党政権末期に時の厚労大臣・小宮山洋子氏が打ち出した愚策である。これは世界的な基準の常識を大きく逸脱しているが、補正される見込みはない。
当時、専門家の良識は時の政治の独走の前に無力であった。その反省は今に活かされているのか。地域住民への配慮は、十分になされているのであろうか?
将来に向けて、今できること
今、私は学校の生徒たちや先生方の意向を受けて、首都圏と福島浜通りの中高校生が対話のできる機会を作ろうとしている。
そもそものきっかけは、甲状腺の検査を受けている福島の生徒たちが、その現状や風評被害、そして、福島そのものを知ってほしいという希望を持っていたことから始まった。一方、首都圏の生徒たちは、福島を知らない、是非一度福島に行って見て聞いて話をしたいという。
昨年末東京で、そして今年4月には、いわき市で双方から集まって『対話』を行った。相互理解と情報共有から始めて、対話の下地ができたように思う。
これからいよいよ各方面の専門家も交えて、中高生自身の目線とマインドで未来を切り開けないかを模索し始めようとしている。
首都と地方という政治や行政にありがちな区別、敷居を越えた何かが中高生の中から創出される予感がある。
2017年5月22日号 週刊「世界と日本」第2101号 より
これからの原子力平和利用とは
NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 氏
《いしかわ・かずお》 1989年、東京大学工学部卒業、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー、産業保安、消費者保護など各般の施策に従事、2007年退官。08~09年、内閣官房企画官。規制改革会議専門委員、東京女子医科大学特任教授、政策研究大学院大学客員教授、東京財団上席研究員などを兼任。11年から、NPO法人社会保障経済研究所代表、現在に至る。
米国トランプ政権でのエネルギー政策動向に関して調査し、当面の日本のエネルギー政策に関する的確な方向性を見いだすため、今年3月中旬、米国の原子力規制委員会や、エネルギー政策に詳しいシンクタンク、エネルギー業界団体などを訪問し、ヒアリングを行った。
総じて言えることは、米国では、原子力も再生可能エネルギーも、低炭素エネルギーとしての評価は顕著ではないということだ。だからと言って、日本では従来通り、原子力と再エネを、低炭素エネルギーとしての観点からも、積極的に評価していくことを怠ってはならない。
日本としては今後とも、これまでの国際協調の下での『エネルギー・環境政策』を進めていき、「パリ協定」の路線を踏襲していくのは当然のことだ。そのため、日本のエネルギー事情を俯瞰すれば、国産エネルギー扱いとなる原子力と再エネについて、的確な振興策が必要となるはずだ。
電力全面自由化が昨年始まったばかりの日本だが、ほぼ全てのエネルギー源は輸入化石燃料に依存している。原子力は、再エネと同様にゼロ炭素供給を実現するだけでなく、低廉・安定・大規模な供給を実現するので、日本では引き続き、最重要電源の筆頭格であることに変わりはない。
自由化が今後も進んでいく見通しである中では、既設原子力発電所の採算性悪化を防ぎながら、運転期間を可能な限り長期化すべきだ。原子力発電所の新設は当面非常に難しいだろう。そのためにも、原子力発電所と電力小売事業者の間で、現行と同等の長期購入契約を締結することを制度化する必要がある。
原子力平和利用に関しては、日米間で重要な取り決めがある。日本での核燃料サイクルが国際的に認められる拠り所にもなっている「日米原子力協定」がそれだ。2018年には改定時期を迎える。
これに関することは、現時点では、米国政界の中では全く語られていないし、トランプ大統領や周辺からも、この問題への関心は全く感じられない。
だが、この改定を阻止し、日本に核燃料サイクル事業をさせたくないと考えている勢力は、トランプ政権にアクセスできる人々の中にも必ずいるはずだ。
日本の核燃料サイクルは、存廃を天秤にかけた場合、日米関係はもちろん、日本のエネルギー安全保障上からも、核不拡散の観点からも、廃止することの意義を見いだすことはできない。
この協定に関係する日米双方の関係者たちは、協定延長に対する国内外からの妨害工作やプロパガンダにかかわらず、『単純延長以上』の内容を目指していくべきである。
再エネ振興策について、米国では、税制優遇など公的支援策付きではあるが、風力発電や太陽光発電の高コスト構造が随時改善され、今では石炭火力発電を凌ぐ発電単価を実現している。風力・太陽光は気象条件に左右される不安定電源ではあるが、天然ガスなど低コスト電源との「ブレンド」で、さらに普及・拡大していく余地は大きいと見込まれる。
日本での天然ガス火力発電は、輸入LNGによるものなので発電コストは相当高く、米国のように安価な電源ではない。日本での低コスト電源は原子力・石炭・水力なので、これらとの「ブレンド」を積極的に進めることが、日本での再エネ振興策として最適だ。
「原子力平和利用」に関しては、さらに以下の4点について深掘って調査した。
(1)「最終処分場」建設計画の行方は?
トランプ政権は、原子力発電所から出る使用済燃料(高レベル放射性廃棄物)の「最終処分場」建設に関し、前オバマ政権が中止したネバダ州ユッカマウンテン処分場建設計画の再開のために、来年度予算案に所要額を計上した。
米国では、使用済燃料の行き場がないことも大きな課題。トランプ政権の方針は課題解決への前進材料になるが、建設計画が再開されても、実際の建設までには相当の時間を要するだろう。
米国は広大なので、ユッカマウンテン以外の場所を探すことは難しくない。ウェースト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社が所有するテキサス州の処分場が、使用済燃料の「保管施設」に関する原子力規制委員会(NRC)の許可を受けるべく申請中。
ユッカマウンテン計画を支持している人の多くは、閉鎖後に「ドライキャスク」という特殊な容器で使用済燃料を保管し続けている原発の地元関係者たちである。
全米にあるこれらのドライキャスクの行き場として、WCSテキサス処分場が手を挙げた。そこでドライキャスクを保管することは、あくまでも「中間貯蔵」であって「最終処分」ではない。将来的にここが最終処分場に姿を変えるかどうかは、政治的に重要な話ではない。
WCSテキサス処分場での「中間貯蔵」が永続されても、何ら政治的な動きは出てこないだろう。それは、「最終処分」を着実に行っていくための人間の叡智だ。
(2)米国では原子力事故後、何が変わったか?
1979年のスリーマイルズ島(TMI)事故の後、事故の影響の他、当時のインフレ状況やエネルギー使用構造の変化など幾つかの理由から、建設途上にあった多くの原子力発電所の新設が撤回された。
しかし、現存する原子力発電所のほとんどは、TMI事故後に許可されたものなので、この事故が米国の原子力産業にとって終末を告げたわけではなかった。
TMI事故後の規制強化や原発向け政府債務保証枠の設定といった政策対応もあり、2007年以降は新規建設許可が相次いだ。直近の新設は、昨年秋に竣工したワッツバー2号機(テネシー州)。
事業者は、TMI事故、チェルノブイリ事故(1986年)、9.11テロ(2001年)から多くを学び、その教訓を反映させているからこそ原発はより安全になっている等々、安全対策の改善点に焦点を当てた説明をするようになった。
TMI事故後に米国内の全ての原発を停止したということはない。米国では、事故を起こしていない原発を強制的に停止させたり、再稼働を認めないような運用はしていない。
(3)化石燃料が豊富な米国で、原発が推進される理由は?
原発の魅力は、低廉安定供給が可能なベースロード電源であること。初期投資はかかるが中長期的な運転資金はそれほどかからない。完全に市場原理に委ねると、天然ガスなどとの競争上厳しくなる。それは電源構成上も好ましくない。
天然ガス価格は、今は安いが昔は違った。長期的には価格は降下するだろう。歴史から学ぶとそうなる。天然ガス一辺倒にならないためにも、原子力は一定比率を維持しておくべきだ。
(4)原子力規制委(NRC)の人事は、どう決まるのか?
NRCの委員は5名で、人事権を持っているのは大統領と上院。NRCの任務に見合った専門性を持った者を選ぶことになっている。
政治的には、委員5名のうち、同じ政党出身者は3名までとされている。実際には、共和党系2名、民主党系2名、独立系1名というように、超党派的な構成で『人事ベストミックス』になるようにしている。
以上の4点を総合的に踏まえると、日本が学ぶべきは、(1)原子力規制委員会の人事構成は政治的に均衡させること、(2)事故炉以外の原子炉は早期に正常稼働させること、(3)“原発ゴミの最終処分”は中間貯蔵期間も含めて超長期的視野で考えること・・・となるはずだ。これは、日本へのとても意義高い示唆である。
2017年5月1日号 週刊「世界と日本」第2100号 より
エネルギー座談会
これからの原子力・エネルギー政策
鼎 談
ジャーナリスト (公財)国家基本問題研究所理事長 櫻井 よしこ 氏
東京工業大学助教 工学博士 澤田 哲生 氏
政治ジャーナリスト 千葉工業大学理事 細川 珠生 氏
《さくらい・よしこ》
ベトナム生まれ。ハワイ大学歴史学部卒。クリスチャン・サイエンス・モニター紙東京支局員、日本テレビ・ニュースキャスターを経て現在、(公財)国家基本問題研究所理事長。インターネット配信の言論テレビ主宰。『凛たる国家へ 日本よ、決意せよ』(ダイヤモンド社)など著書多数。
《さわだ・てつお》
1957年兵庫県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、三菱総合研究所に入社。ドイツ・カールスルーエ研究所客員研究員などを得て、91年から現職。中・高校生向け講座も多く開催。専門は原子核工学、核融合システム安全など。著書は『御用学者と呼ばれて』など多数。
《ほそかわ・たまお》
平成3年、聖心女子大学卒。平成7年に『娘のいいぶん〜がんこ親父にうまく育てられる法』で、日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。平成7年より「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本)に出演中。千葉工業大学理事。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。
櫻井 メディアは「反対」より正情報を
澤田 専門家は「原発メリット」発信を
細川 老朽化「火力発電所」の対策も
澤田 「最終処分場」は技術的に可能だ
櫻井 「福島出身」政治家は命をかけて
細川 「エネルギー教育」を義務教育に
内外ニュース「創業45周年記念特集号」の第2弾企画として、「エネルギー座談会」を実施した。日本は今、東日本大震災以降、原子力発電やエネルギー自給率の大幅低下など、さまざまなエネルギー問題に直面している。今回は「これからの原子力・エネルギー政策について」と題し、このような状況をどう捉え、どのような解決を目指していくべきかについて、ジャーナリストの櫻井よしこ氏と、原子核工学の研究者で東京工業大学助教の澤田哲生氏、さらに政治ジャーナリストの細川珠生氏を迎え、忌憚なき意見交換の鼎談を行った。
澤田 日本では今、原子力は、後ろ向きの産業になっていますが、中国では「3.11」以降、20基から30基の原発の新設、そして韓国でも新設しており、世界的にはそういう動きがあります。日本は原発先進国として、貢献していかなければならないですね。
櫻井 世界最大の石油備蓄のあるサウジアラビアでも、いずれ石油の時代ではなくなることを考え、原子力で国のエネルギーをまかなっていくために、日本の原発技術を導入したいと考えています。日本は原発に対し、どうしてこんな後ろ向きのメンタリティーになるのでしょうか。
細川 日本の原子力技術は、国家としてお金を稼げるし、優れた人材・能力もあり、それらを寝かしておくのは宝の持ち腐れですよ。
澤田 それは原発のポジティブな面が、あまり伝えられていないからです。原発は一つの悪の塊のように言われているので、将来、どういうところにつながっていくか、という話がされていないのです。
櫻井 日本では安全と安心が、ごちゃ混ぜになっています。科学的に見て安全というのと、人々が安心を感じるのは別だと思うのですが、そこのところが混乱している。科学的な知見が欠けているのです。
澤田 メディア、特にテレビが不安を煽っているように思います。関心が集まり、視聴率が取れる、ということで。
細川 今稼働している火力発電所についても、あまり語られていません。実際に火力発電所は老朽化し、あちこち修繕しながら稼働しているようですが、これでは、いつ大規模な事故が起こるかわからないです。
澤田 東南海地震が起こって津波がくると、火力発電所は無防備ですから、とたんに全部使えなくなる可能性が高いです。現在使用している電気のうち、火力発電が8、9割を占めているので、そうなると電気はなくなります。もう一つ、火力発電の問題は、燃料をどんどん継ぎ足さないといけないことで、石油を大型タンカーで運んできても、1つの発電所で、たった2、3日で使ってしまうわけです。
一方、原子力発電所は、いったん燃料を入れると、少なくとも1年、さらに数年は、そのままで使えるだけのエネルギーをリザーブできる施設です。さらに核燃料サイクル、つまり新しい燃料プルトニウムをつくるという、非常に有り難い面もあります。
しかし現在は、原子力の怖い面ばかりが強調されて、メリット、特に日本のような資源小国では、どういう長期的な視点でメリットがあるかが、ほとんど語られていないし、人々も聞く耳を持たない状況になっています。これは我々専門家の責任でもあります。
櫻井 NHKなどの大きな影響力を持つメディアが、澤田先生のような、きちんとした考え方を伝えていない。非情に大きな責任があります。
また、今の原子力にとって不幸なことは、メディアが「反原発」ということで、頭から否定する論調を報じることに加え、原子力規制委員会の委員らが民主党政権によって選ばれ、原発を潰すという考えの下に各原発に対し、非合理極まる対策を要求していることです。結果、原発の稼働は遅々として進まない。
澤田 話は変わりますが、お二人は原発の現場をご覧になっていますよね。
櫻井 随分いろいろな現場に行き、取材しました。
細川 現場がずっと工事をしているのを見ると、何か悲しくなりますよね。
澤田 現場の工事ですが、何とかゴールが見えてくると、次にまたハードルが出てくるのです。その結果、追加的安全措置対策の多くは、次にいつ起こるかわからない重大事故対策なので、使わない機器ばかりが増え、しかも数千億以上も投資していて、こんなバカなことはありません。
細川 安全対策の工事にものすごくエネルギーが取られていて、本来はより安全に運用していくために、知恵を絞っていかなければならないのに、研究者も事業者もなかなかその方向にいかない。
澤田 まして追加安全対策工事が10年も続いたら、やる気が失せますよ。どこにいっても最新の設備など、素晴らしいものがありますが、それをいつ動かせるかわからない状況にしているわけで、これはメンタル的に疲れますね。
櫻井 その一番の例が「もんじゅ」だと思います。私はもんじゅのことをよく勉強していなかった時は、「どうして失敗ばかりするのかしら」と思っていました。しかし現場を取材して、当事者の話を聞いてみると、いかに不条理な非難を浴びているか、わかりました。もんじゅは、日本の非科学の極致で潰されていった組織ではないかと思うのです。
細川 原発の稼働がなかなか進んでいない理由の一つに、原発の廃棄物をどうするのかということとセットにされ、「最終処分場がないからダメだ」と言われますが、そういうことに対して、どのように説得していったらいいと思われますか。
櫻井 日本は使用済み核燃料を大量に持っていますが、これをどんどん核燃料サイクルで処理すれば、その分量が7分の1になるだけでもすごいことだと思います。こういった前向きの側面をわかりやすく伝えていくことです。
細川 最終処分場との関連でいうと、どのような論理を展開すれば、原発反対の人に対抗できるのでしょうか。
澤田 最終処分場を日本でつくることは、技術的には可能なのです。ただ、技術者たちが、一般の人に広く伝えるノウハウを持っていないことが、非常に大きい。日本はだいたい300メートルも地下を掘ると、火山の近くとか、活断層の近くを排除しても残るところ、つまり、科学的有望地とされる箇所が、日本には結構あります。
櫻井 日本人のイメージとして、最終処分場や貯蓄場は日本にはないという思い込みがすごく強いと思います。今のお話ですと、日本にもあるんだったら、それがどこか知りたいと思いますが。
澤田 科学的有望地を提示すると、反対運動が起きるとか、大手のメディアが政治的イシューにしかねないので、発表する良いタイミングを見計らっていて、それでどんどん先延ばしになっているのだと思います。
櫻井 しかし、日本には「最終処分場がない」ところから話が始まるのと、日本には「いくつもあるが、政治的にどう克服しようか」では、話の土台が全然違います。であれば、可能なことから出発しないといけないわけで、澤田さんたち専門家が、どんどん発表していただきたいですね。
澤田 だから私は一般の方とか、中学生や高校生にそういう話をする機会がある時には伝えています。「技術はあります、場所もありますよ」と言うと、みんな「えっ?」、「そんな話は聞いていない」と言うのですよ。
細川 例えばどんな場所があるのですか。
澤田 日本全国にあります。北海道の幌延や岐阜県の瑞浪で、試験的に300メートルや500メートル掘り進んで、そこの地盤がどうなっているか調べています。
ただし使用済み核燃料で、再処理した後の最終処分用のガラス固化体みたいなものは、おそらく六ヶ所村で作って、船で運ぶのが一番現実的なので、沿岸部から穴を掘って地中深くの底につくるのがいいと思います。
細川 六ヶ所村を見るだけでも、日本ってすごいなと思います。あのリサイクル技術や国家石油備蓄基地、風車などのエネルギー集積地もあり、それを本格稼働させられないというのは、努力したことが無駄になってしまいます。
そういうことも、実際に現地に行かないとわからないですし、メディアもさることながら、事業所の発信力に問題があると思います。それに加え、そもそも一般の人たちが、エネルギー全般に関して学ぶ機会がなかったことが一番大きな問題ではないでしょうか。エネルギーの専門家が努力してきたことを、義務教育の中で教える機会が必要です。
澤田 おっしゃる通りで、私は義務教育の中ではありませんが、岐阜県瑞浪の最終処分場の試験施設を、六ヶ所村と都会の中学生が一緒に見て、そこで対話をしましょうということをやっています。
六ヶ所村の中学生たちは、自分の村がエネルギー問題を引き受けていることに誇りをもっていますが、都会の中学生は六ヶ所村がどういう所で、何をしているのか知りません。そこで、日本のエネルギー問題については、中学生や高校生などの、まだ自分の立場が決まっていない人たちが考え、現場を見ておくことは、日本の将来にとって非常にいいと思います。
櫻井 そういう中学生同士の交流を、見てみたいですね。
細川 そうなのです。これからの小学生や中学生が原子力に関心を持つためには、ぜひ義務教育の中に、原子力を含めたエネルギー教育を入れていってほしいですね。
澤田 ただし、教育の現場はすごくセンシティブなところがあります。よく言われるのは、「3.11」が起こった時、ほとんどの人が放射能とは何かを知らなかった。それは30年間、学校教育の現場から放射能教育がなくなっていたからで、この空白が「放射能はとにかく怖いのだ、どんなに微量であっても怖いのだ」という、放射能恐怖症を蔓延させてきたのです。
細川 最後に、原子力に関する情報発信として、どのような方法がいいと思われますか。
澤田 今、安倍首相がニコニコ動画などに積極的に出ておられます。原子力問題もネットを利用して情報発信すると、割りにポジティブな反応が多いので、それも一つの方法です。
もう一つ大切なことは、情報は発信するだけでなく、どこにどういう情報が埋もれているのかを見つけ出してあげることですが、それがなかなか難しい。
櫻井 加えて、与野党ともに福島出身の政治家なら、ここで命をかけて走り回って、勉強し、どうしたらもう一度、原子力とともに、ふるさとを立て直せるか行動してほしいのに、ただ、メディア任せ、世論任せの態度が、私は本当に残念です。
政治家なら選挙を気にせざるを得ないことはわかりますが、そこを越えてもう少し中長期の考えを持ってほしいです。そして一方、有権者である私たちも、問題の本質、基本をきちんと見ていかないといけない。目の前のことで右往左往し、ポピュリズムになってしまいますが、そういう国民であってはいけないと思います。
細川 たしかに私たち国民としても、正しい科学的知見を持ち、問題の本質を見ていく必要がありますね。今日はどうもありがとうございました。
最新エネルギー情報お役立ちリンク集
電気事業連合会 http://www.fepc.or.jp/
同サイト内情報ライブラリー http://www.fepc.or.jp/library/index.html
電事連チャンネル http://fepcvcms.primestage.net/
・学校教材としても使える動画が豊富。
・海外のエネルギー事例もわかる。
・これからのエネルギーについて知ることができる。
日本ガス協会 http://www.gas.or.jp/
ガスエネルギー新聞 http://www.gas-enenews.co.jp/
経済産業省 http://www.meti.go.jp/
資源エネルギー庁 http://www.enecho.meti.go.jp/
エネルギー・環境政策一覧(経済産業省内)
http://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/index.html
総合資源エネルギー調査会等審議会
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/index.htm
首相官邸災害対策ページ http://www.kantei.go.jp/saigai/
一般社団法人 日本経済団体連合会 http://www.keidanren.or.jp/
経済産業省関連リンク http://www.meti.go.jp/network/data/b300001j.html
NPO法人 国際環境経済研究所(International Environment and Economy Institute) http://ieei.or.jp/