Coffee Break<週刊「世界と日本」2275号より>
爽風エッセイ
ハンバーグ&コーヒーで〝健康〟?
大阪経済大学特別招聘教授
岡田 晃氏
昔から食べ物の好き嫌いはあまりないほうだが、それでも歳とともに食の嗜好が変わってきたように思う。最近は健康を気にして、魚や大豆類を多く摂るように心がけ、脂分や甘いものは控えるというのが生活習慣になっている。
そんな食生活の中でも、今も昔も変わることなく大好きなのがハンバーグだ。
何歳だったかあいまいだが、小学生の頃、誕生日祝いに親子四人で洋食レストランに出かけハンバーグを食べたことがある。当時の我が家としては最大級のぜいたくだった。その楽しさも相まって、ハンバーグを大好きになった気がする。家でも、よく母親が作ってくれた。ちょっとしたご馳走という感覚だった。
それから半世紀以上たっても、ハンバーグ好きは変わらない。家でもよく食べるが、外で食べる機会も多い。
大学の関係で大阪に頻繁に出かけるのだが、新大阪の駅ビルの中にある某洋食レストランのハンバーグがお気に入りだ。帰りの新幹線に乗車する前にその店でゆっくり食べるのが、大阪出張の楽しみの一つにもなっている。
初めて入った店で、迷いながら注文することもあるが、期待通りのハンバーグが出てきた時は大満足。ナイフを入れるとジュワッーと肉汁があふれるのが最高だ。ソースはやっぱりデミグラスソースがいい、などと、『孤独のグルメ』の井之頭五郎のような気分だ。
前述のように、歳をとるにつれて普段の食事は魚などが多くなって肉を摂る頻度が減ってくる。だが専門家の話によると、脳の活性化や筋力維持など健康長寿のためには肉をそれなりに摂ることも重要なのだそうだ。ステーキは少しヘビーだが、ハンバーグは打って付け―と勝手に解釈している。
さて、ハンバーグを食べた後はコーヒーというのが定番だ。と言うより、何を食べても食後のコーヒーが好きなのだが…。
コーヒーを初めて口にしたのは、これまた小学生の頃。何かの折に父親に連れられて喫茶店に入った時、一口飲ませてもらった。その時に初めて味わった何とも言えない感覚は、まさに「大人の味」だった。不思議とよく覚えている。
コーヒーはまだそれほど一般的ではない時代だったが、しばらくして、『コーヒー・ルンバ』という歌が流行った。あの斬新な歌詞と西田佐知子の「大人の雰囲気」が印象的だった。その後、多くの歌手が同曲をカバーしているが、個人的にはやはり西田佐知子バージョンが一番好きだ。
今ではすっかりコーヒー漬けの毎日だ。朝起きてまず一杯、毎食後に一杯、外出すれば外で一杯、在宅でも間食の時や原稿執筆中に一~二杯という調子で、平均すると一日四~五杯程度、多い日はそれ以上になることもある。コーヒーはポリフェノールの効果で心疾患などのリスクを低下させるそうだから、これも「健康にいい」と勝手に正当化している。
ただそうは言っても飲み過ぎも気になる。夜間に原稿を執筆していると一息入れたくなるが、「コーヒーをもう一杯飲むか、どうするか」でしばらく迷ってしまう。目下のところ、これが最大の悩みだ。