ダイバーシティ『女性躍進の現在と今後』
カルビー(株)執行役員
コーポレートコミュニケーション本部 本部長
後藤 綾子 氏
「かっぱえびせん」「ポテトチップス」などのスナック菓子でお馴染みのカルビー(株)。2009年、経営陣を刷新するため、ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)日本法人で社長を務めた松本晃氏を会長に迎えた。以降、老舗企業の体質改善に臨んだ同社は、6期連続の増収増益を続けている。その根幹には、ダイバーシティ推進による社員の意識改革が大きく寄与している。執行役員で、ダイバーシティ推進の中心である後藤氏に話しを伺った。
女性の多様性を活かす企業へ
「にいまる・さんまる一番乗り」目指して・・・
―貴社は、グループ全体でダイバーシティの推進に力を入れておられますが、その目的をお教えください。
経営の重要な戦略として、「女性の活躍なしにカルビーの成長はない」という方針のもと、まずは全従業員の約半数を占める「女性」の活躍を推進していくことに着目し、ダイバーシティ推進に取り組んでいます。
将来的には、性別に限らず、国籍、年齢、障害の有無などの垣根を越えて、多様性を存分に活かせる企業を目指しております。これが、会社が成長するための原動力につながると信じています。
―具体的には、ダイバーシティ委員会が中心となって活動されているようですが。
2010年に発足した「ダイバーシティ委員会」を中心に、まずは啓発活動を中心に行ってまいりました。14年度からは、より一層「女性の活躍推進」に集中し、取り組んでいます。
推進体制につきましても、それまでの委員会主体の体制から、全国の事業所のトップが中心となって推進する体制にシフトし、よりスピード感をもって取り組めるようにいたしました。本社のダイバーシティ委員会は、全国の委員会を支援するかたちをとっています。
―女性の活躍支援としては、どんな取り組みをされているのですか。
女性の活躍を推進するための制度として、2014年10月に「メンター制度」を導入、同年11月には女性管理職を計画的に育成する目的で、女性管理職候補生を対象に「キャリア研修」を開催いたしました。
「メンター制度」については、12人の女性従業員(メンティ)を対象に、月1回の面談を実施しました。豊富なマネジメント経験をもつ本部長職(メンター)が、管理職のメンティのサポートをします。メンティは、その年初めて部長・課長職に就いた女性が対象です。
また、年2回開催している、執行役員以上が集まる“成長戦略ワークショップ”には、女性の管理職や管理職候補生、男女問わず若手も一定数参加しています。
これは、女性が経営者目線を持てるようになること、またディスカッションに多様性を取り入れることで、より良いアイデアが生まれることなどを目的にしています。
このような取り組みも含め、2014年、15年と2年連続で「なでしこ銘柄」に選定していただくことができました。
―松本晃会長や伊藤秀二社長も、非常に積極的にダイバーシティを推進しておられますね。
ダイバーシティを推進するには、まずはトップが宣言することが重要だと考えており、会長も社長も積極的に社内外へ向けて“ダイバーシティの重要性”についてメッセージを発信し続けています。
12年には、会長と従業員がダイバーシティについて直接語り合う「晃さんとダイバーシティについて語ろう」という座談会をスタートさせました。ここでは、ダイバーシティ推進の必要性・重要性の理解を一般従業員により深めるための、良い機会となっています。
また、14年6月には、女性の活躍推進に積極的に取り組んでいる企業の、男性リーダーによる「輝く女性の活躍を加速するリーダーの会」(内閣府男女共同参画局)に社長の伊藤がメンバーとして参加し、「行動宣言」を策定・公表いたしました。
―工場では、どんな活動をしているのでしょうか。
各工場主導のもと、2011年度から、製造現場で啓発活動を行う「工場部会」を始めました。従業員同士の理解を深めて行動に移すことを目的に、工場内にポスターや掲示板を設置して情報発信なども積極的に行っています。
13年度は、「ダイバーシティランチ交流会(下妻工場)」「ティータイムミーティング(鹿児島工場)」などが実施されました。ほかにも、社長とのワークショップや工場現場のイクメン紹介、サンクスカード活動、工場内の従業員同士での工場見学ツアーなど、さまざまな活動が展開されています。
14年度になると更に活動が進みました。湖南工場のポテトチップス製造課では、育児勤務者の提案により、長年続けていた固定勤務シフトから、育児勤務者も働きやすい新勤務シフトへ移行する取り組みが実施されました。その結果、生産性向上や品質改善が実現し、「ダイバーシティ経営企業100選」にも選定されました。
―ライフワークバランスへの取り組みは?
当社では、従業員の生活(ライフ)を重視する意思を示すため、「ライフワークバランス」という言葉を用いています。
「良いインプットが無ければ、良いアウトプットはない」という考えのもと、「早く出社して仕事が終わったらすぐに帰る。退社後の時間は自己の成長のため、家族のため、趣味のために使う。1日を2度楽しむ」ことを勧めています。また、家庭と仕事の両立のために、制度や環境を整備しています。
具体的には、水曜日を「早く帰るデー」(本社)と定めたり、夏季「サマータイム」の実施などに取り組んでおり、在宅勤務も導入しています。
2015年2月にはライフワークバランスの実現に向けた活動が評価され、一般社団法人日本テレワーク協会より「第15回テレワーク推進賞」奨励賞を2年連続で受賞しました。
―今後の目標についてお教えください。
当社は、「にいまる・さんまる(2020年30%)一番乗り」を目指しています。日本で最初の2030企業になるため、文字通り、2020年には女性管理職比率を30%以上にすることを目標に、これからも活動を進めてまいります。
週刊「世界と日本」2015年8月17日 第2059号より