創業30周年記念懇談会 あいさつ
内外ニュース社長・清宮 龍
勇敢に正しい言論
お陰さまで、内外ニュースも創業30周年を迎えることができました。きょうは多年お世話になりました顧問の方々、全国約30支部の会長および会員の皆様、さらに内外ニュースの言論活動をしていただいている講師、執筆者の方たちにお出でいただいております。
政治家の方は、現職の議員で元総理の方だけにご案内をいたしました。中曽根先生が一番長老ということで、ご挨拶をいただきました。さらに海部俊樹さんがご出席になり、また病後間もない橋本龍太郎さんが先ほどすこし顔を出して、お帰りになりました。
思い返しますと、戦前に日本が戦争への道を走っていく中で言論界は多くの過ちを犯し、結局は日本を亡国一歩手前までいかせてしまったわけです。そういう時期にも優れた識見を持った言論人の先輩や、識者の方が多少はおられました。
戦前の中外商業の政治記者で、戦後その後身である日経の編集局長をされた萩原伯永さんという方がいらっしゃいます。日中戦争が始まり、萩原さんが上海に派遣されることになり、当時、中外商業の編集局長をしていた小汀利得さんに挨拶に行かれた。小汀さんは 「国際的に金融・経済の重要都市である上海を、どうしたら復興させることができるかを勉強してきてくれ」と言われたそうです。
また、萩原さんは当時の海軍省の山本五十六次官のところに行ったら、同じようなことを言われたそうです。萩原さんは、大変感銘を受けたと話しておられました。残念ながらそういう方は寥々たるもので、当時の新聞、ラジオは米英批判を繰り返し、戦争に突入して行ったのです。
戦後の現在を見ても、当時とあまり変わらないと思います。ひとつの流れができるとマスメディアは全部その方向に走りだしてしまう。興味本位に事実を折り曲げて報道し、それによって国論がおかしな方向に向いてしまっている。私どもは正しい言論活動によって健全な世論というものを育成することに寄与しなければいけない。改めて強く感じているわけです。 私の尊敬する故ソニーの盛田昭夫さんがよくおっしゃっていました。 「節を曲げずに日本の将来のためにいいと思うことを勇敢に唱え、行動してほしい」と。その遺言を守りながら、これからも日本の言論界のために微力を捧げたいと思っておりますので、よろしくご指導をお願いいたします。
(週刊「世界と日本」1535号 1面より)