創業三十五周年記念懇談会 あいさつ
内外ニュース会長・清宮 龍
言論で正しい世論形成を
おかげさまで内外ニュースは創業35周年を迎えることができた。本日は、内外ニュースの活動を支援していただき、またご指導を賜った会員、あるいは購読者の方々など、大勢にご出席いただいている。
私は政治ジャーナリストを長くやっているので多くの政治家を存じているが、すべてお呼びするわけにもいかないので、きょうはその中から現職の安倍総理と、議席をお持ちの海部、森元総理においでいただいた。
内外ニュースは創業以来ずっと、言論活動を通じていささかなりとも国家、社会に奉仕したいと、その道一筋を歩み今日に至った。その歩みの中での思い出をひとつ紹介したい。
ある高校教師からこんな話を聞いたことがある。その先生は日教組と相容れないため、非常に厳しい体験をたくさんしてきた。ある雪の日の集会の帰りに、長靴を履こうとしたら、靴の中に画鋲がいっぱい投げ込まれていた。大変ショックを受けたが、学校で内外二ュースの「世界と日本」を読み、自分は間違っていなかったと勇気がわいてきた、と。
私はこの話を聞き、うれしく、また言論人の使命を考え、気の引き締まる思いをした。
われわれの大先輩で、戦争中に言論を通じて戦争への流れを食い止めようとした菊竹六鼓さんという方がおられる。福岡日々という地方新聞で言論活動を展開していたが、五・一五事件で犬養木堂首相が射殺された時、「これは軍による虐殺だ。それを行った軍人たちは不逞の集団だ」と言い切った。
当然のことながら軍が怒り、新聞社の上空で爆撃機が急降下を繰り返した。謝罪しなければ爆弾を落とすぞと威嚇したので、社員はこのままでは新聞社がつぶれてしまうと、弱音をはきだした。
けれども菊竹六鼓は「社がつぶれるかどうかの問題ではない。国がつぶれるかどうかの問題だ」と言い放って、決然と一歩も退かなかった。
その菊竹六鼓は昭和12年、病に倒れて社にでてこられなくなったが、新人社員がぜひにと訪ねて行った際、かすれ声で言論人としての道を教えてくれた。
「ひとのことを書く時はわが身に置き換えて書け」。そして「うそを書くな。うそを書けば読者がそれを信用する」とも教えた。
かつて「北朝鮮は地上の楽園だ」と社会を混乱に陥れた大新聞もある。
われわれは先人の教えを踏まえ、正しい世論の形成に寄与していかねばならない。自戒を込めてそう思っている。
(週刊「世界と日本」1766号 1面より)