内外ニュース懇談会 講演要約
講演
日本が直面する危機に対峙し国益を守る
ジャーナリスト
(公財)国家基本問題研究所理事長
櫻井 よしこ 氏

内外ニュース新春東京懇談会1月例会は23日、ザ・キャピトルホテル東急で行われ、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が「日本の針路と誇りある国づくり」と題し、保守再生を目指し日本を取り巻く内外の情勢、国を守ることの大切さを、幅広く提議、強く熱く語った。
第2次トランプ政権の国家安保戦略

今後のアメリカがどうなるか、トランプ大統領をしっかり捉えることが、日本国の国益を実現する意味で必要です。トランプ大統領は、自分が言ったことを守る。それと第3次世界大戦はやりたくない。日本もこの二つを念頭に対トランプ対策をとるべきで彼の言動、足跡を改めて見ることがとても重要で参考にもなる。
第1次政権を始めた2017年の12月、トランプ大統領は戦略的な転換を成し遂げた。9・11があってアメリカ最大の敵はテロリスト勢力だったが、これからの脅威は国家が相手であり、中国とロシアを指す。とりわけ中国と確信できたのは、2018年初めにアメリカ合衆国通商代表部(USTR)が出した年次報告書で、中国を世界貿易機関(WTO)に入れたのは間違いであると書いている。中国こそが、アメリカにとって非常に大きな問題だと経済面から打ち出した。
中国・メキシコ・カナダに関税発動の大統領令

トランプ大統領は当初中国に対する関税は当初60%と言っていたが、10%の追加関税を課す大統領令に署名した。ホワイトハウスは声明で、「本日の関税発表は、毒性の麻薬のアメリカ流入を阻止するという約束の責任を中国・メキシコ・カナダに取らせるために必要なものだ」と表明した。アメリカでは働き盛りの年代の人が年間何万人も麻薬で亡くなっている。中国は、国有企業が麻薬製造に関わり、アメリカに密輸することを国家戦略としている。トランプ大統領は「選挙戦で、不法移民と麻薬が国外から流入するのを食い止めると約束し、アメリカ国民の圧倒的多数がこれに賛成して投票した」と述べている。
グリーンランドの所有とパナマ運河の返還
トランプ大統領が安全保障と交通の要衝グリーンランドを買い、パナマ運河も取り戻すと言い始めた。国家基本問題研究所の静岡大学教授の楊海英氏が、この二つの問題を考える際、歴史的スパンを広げて見れば、悪いのは中国と指摘した。北極海に浮かぶグリーンランドは、国土の約2割が中国に買われ、グリーンランドは中国と契約した土地売買をご破算にするという大決断をした。取られて基地を造られたら北極海は中国の支配下に入り、飛行機もミサイルも北極の上を通れば最短でアメリカを簡単に狙えるので、軍事的にも経済的にも北極海を制するのは大変な意味がある。
グリーンランドはデンマーク領だが、デンマークが面倒をあまり見ない間に、中国に浸食された。人々は、トランプ大統領の言葉に勇気づけられ、デンマークと縁を切りアメリカ経済の中でビジネスをやり、経済的発展を勝ち取りたいと希望している。
安全保障では、アメリカの核の傘に入って安全を守ってほしいので、今、両国間でいろんな交渉が行われている。アメリカとの関係が強まるのは確かであり、戦略的に西側に優位な立場が築かれると思う。
もう一つがパナマ運河。最初、フランスが切り開こうとして、うまくいかず全然進まないときに日露戦争が起きた。大国の帝国ロシアに日本国が勝つと、セオドア・ルーズベルト大統領は大変驚き、すぐに調べさせた。ロシアの敗因は、ロシアを出立したバルチック艦隊がアフリカ大陸の最南端を通り、インド洋に出て東進しアジア側の海軍とすぐ合流できず、戦力を統合できなかったこと。敗因を聞いたルーズベルトは即座にパナマ運河だと気がついた。アメリカの艦隊も同じく太平洋側と大西洋側に分かれていて、南アメリカ大陸を回ると間に合わない。
今、中国の企業がパナマ運河を管理しているので、取り戻すというトランプ大統領の考え方は、戦略的にもすごい知恵だと思う。

石破内閣の外交能力を疑う
日中関係の変遷を事実関係からお話ししたい。小泉首相の靖国参拝で日中関係が冷え込み、安倍第1次政権時代、冷え込んだ日中関係関係改善のため、当時の胡錦涛国家主席との間で『戦略的互恵関係』という概念を打ち出した。安倍首相がご病気で1次政権は倒れ、2012年12月に再登場。中国は習近平国家主席の時代になって力をつけ、そして能力を隠して力を備える『韜光養晦』というそれまでの外交方針を捨てて、2018年以降、戦略的互恵という言葉も消えていました。ところが。西側の有力国と対立した中国から孤立回避を図るための働きかけを受け、岸田前首相は2023年11月、『戦略的互恵関係』の復活を受け入れた。それを引き継いだのが今の石破首相、岩屋外相です。
中国で日本人学校の児童が殺害されたときも、中国政府の謝罪はありませんでした。福島第1原発の処理水を『核汚染水』と呼び続け、約束した日本水産物の輸入再開を実行しないし、農産物も禁輸にしています。軍事的には、日本を狙った核とミサイルの増強を図っている。そのような状況でも岩屋外相は中国人の観光客向けのビザの発給要件の緩和や反スパイ法の規制を強め、各国が駐在員を減らして家族をいち早く帰そうとする中、修学旅行を増やす約束をした。二人とも中国の罠にまんまとはまっています。
国家基本問題研究所でこの1年余り、中国がアメリカを凌駕するミサイルを持ち始めていることを衛星画像で確認しました。今までは核の先制攻撃はしないと言ってきたが、非核国、非核地域に先制核攻撃はしないに変わった。アメリカの拡大抑止の戦略を日本が支持することは、自前の核を持たなくてもアメリカの拡大抑止の力を強くする戦略に加担して核保有国と同じだから、先制核攻撃もあり得るという姿勢を示し始めた。
石破首相は謙虚に安倍外交の下で何が話し合われ、起きたか、安倍外交を支えた人たちに話を聞き、外務省の議事録に全て目を通し頭の中に入れるべきだ。日米同盟よりも日中関係に軸足を移して優先度が逆転する状況が生まれている。一日一日、日本の国益を損なっているため、石破首相と岩屋外相には早くお辞めになることが一番の日本国の国益になると思っています。

※講演動画は「内外ニュースチャンネル」でご覧いただけます。(会員専用)
動画 櫻井氏202501(会員専用) - 内外ニュースチャンネル (naigainews.jp)
講演要約は週刊「世界と日本」NO.2292号に掲載されます。
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