内外ニュース懇談会 講演要約
講演
「今、政治は何をしなければいけないのか」
衆議院議員 外務大臣
河野 太郎 氏
内外ニュース東京懇談会7月例会は3日、ザ・キャピトルホテル東急で行われた。外務大臣の河野太郎氏が「今、政治は何をしなければいけないか」と題し講演した。河野氏は外務大臣としての諸外国訪問、北朝鮮問題から、国益を考えた国会運営の合理化を目指す動きにまで言及し、今思うところを幅広く熱く語った。(講演要旨は次の通り)
外務大臣就任後、50数カ国を訪問
昨年8月3日に外務大臣を拝命し、のべ50数カ国を訪問した。私と前任の岸田文雄外務大臣の2人合わせて、昨年の12月までの5年間でのべ110カ国行ったが、その間、中国の王毅外交部長はのべ260カ国くらい訪問している。
かつて日本のODA(政府開発援助)が世界一という1980年代なら、日本の外務大臣が来なくても多少許されたかもしれない。しかし今、中国がいろいろな国に投資や支援をしている中で、日本と中国との間の、これほどの訪問国数の差は、何とかしなくてはいけないと真剣に思っている。
先週行ったブータンは、日本の外務大臣どころか閣僚が来たのは初めてだと、歴史的な歓待をしてもらった。また、スウェーデンに最後に行った外務大臣は私の父の河野洋平であり、フィンランドに最後に行った外務大臣はというと、安倍晋太郎外務大臣だ。ヨーロッパの国々でもこういうありさまなので、これがアフリカや中南米となると、訪問していない国が結構ある。
さすがにこれでは、日本の外交はどうにもならないと考え、去年末、外務大臣専用の飛行機購入と、国会の最中でも外務大臣の外遊を認めてほしいと言ったが、「外務大臣が飛行機を買えと言っている」という話だけが広まった。
予算委員会の集中審議と大臣の役割
国会は国権の最高機関であると憲法に書いてあり、「閣僚は国会に来て、物事の説明をしろ」となっているが、それでも少し限度があるのではないかと思う。
今年、国会の予算委員会の集中審議で「外交安全保障など」という議題が何度かあった。その特徴は、総理が出てくることとNHKが放送することで、総理と財務大臣、外務大臣、防衛大臣の4人は、朝の9時から閉会する5時まで、ずっとそこに座っていることになる。
しかし、この7時間の集中審議では、外務大臣の答弁時間は実に6分41秒。防衛大臣も似たようなものだ。あとは何をしているかというと、だいたいが「モリカケ」問題である。また、大臣がいない時には国会で副大臣が答弁できるように、政務次官をやめて副大臣をつくったのに、今、全く機能していない。
今や中国が、経済的にも軍事的にも極めて強大になり、様々な国際的な問題がある中で、「外務大臣に、ずっと国会に座っていろ」では、日本の国益を守ることはできない。
霞が関にも働き方改革が必要
今、小泉進次郎(自民党筆頭副幹事長)氏を筆頭に、中堅若手とベテランが加わり、「国会改革をしよう」という動きがある。閣僚の国会答弁は大事だが、その答弁のために、大臣が毎日、時間をとられ過ぎている状況を見ると、これは少しやり過ぎではないか、と思う。大臣が自分の省庁のマネジメントや政策をどうするかという議論を、きちんとやらせてもらわなければ、行政はうまくまわらない。
今の国会の運営を見ていると、いかに委員会採決、本会議採決を遅らせるかといった、ほとんどが「日程闘争」である。どうしてそうなるのかというと、今の国会は全部「党議拘束」がかかっているので、採決の結果が目に見えている。つまり野党は採決をすれば必ず負けるので、抵抗しようと思ったら日程闘争をするしかない。だからここ(の弊害)を変える必要があると思う。
議院内閣制
「議員内閣制」では、政府に入った政治家、総理大臣、閣僚、副大臣、政務官は政府の一員として、連帯して国会に責任を負う。しかし、「政府に入っていない与党(議員)が、政府の政策を無差別に支持しなければならないか」というと、そのようなルールは議員内閣制にはない。(党議拘束をかけるのなら)選挙が終わった時点で、国会の存在意義はなくなってしまう。
議員立法の審議は党議拘束なしに
本来の議員内閣制では、政府が与党(議員)に働きかけをして、政府の提案に対し、与党(議員)の支持を得て、できれば野党(議員)にも賛成してもらい、国会を通すのが本来のあるべき姿である。
しかし自民党は、国会に政府が提案をする前に、部会や政調会、総務会を経て、「事前審査をしたから全員賛成しろ」と、党議拘束をかけていることが結構ある。それを本来の議員内閣制に戻さなくてはならない。野党も政府の提案に対し、きちんと政策論争をする。それが国会の議論を活性化させると思う。
今、例えば衆議院なら、予算関連でなければ20人の賛成者がいれば議員提案ができるので、どんどん出してもらう。そして政策の中身の議論が行われている国会なら、多くの国民も真剣に聞いてくれるであろう。
平成のうちに、まず議員立法の審議は党議拘束をなしにし、国会というオープンな場で議論し、それを国民に見てもらい、物事を決めていく。そういう国会に変えていかなければ、政治に対する信頼回復はできないだろう。
アジア代表としての日本外交
最後に外交面だが・・・。北朝鮮については、「核生物兵器や化学兵器を、完全に不可逆的に検証可能に放棄する」のか、「全てのミサイルを放棄する」のかが、大きなカギである。
しかし北朝鮮がここまで出てくることができたのは、やはり国連の安保理決議を全ての国が守り、きちんと経済制裁ができたからだ。これからも国際社会の連帯をしっかりと維持することができれば、北朝鮮問題は動くと思う。
また、北朝鮮問題は、東アジアだけの問題ではない。全世界が危機感を共有し、全世界として当たらなければならない問題だ。
日本の平和と安定、そして国益を守るためには、日本の政治も21世紀に合わせ、少しずつ変革していく必要があることを、皆さんに理解していただきたい。
※講演全文は月刊『世界と日本』1290号に収録されます。また、要約は週刊「世界と日本」NO.2131号に掲載されます。
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