内外ニュース懇談会 講演要約
講演
「当面の外交化課題と今後」
衆議院議員、外務大臣
河野 太郎 氏
内外ニュース東京懇談会7月例会は1日、ザ・キャピトルホテル東急で行われ、河野太郎氏が「当面の外交課題と今後」と題し講演した。大阪で開催されたG20から、その直後のトランプ大統領と金正恩委員長の首脳会談、イランとの核合意、日本の中東・アジアでの役割まで、外交課題について幅広く語った。
日本初の最大級国際会議G20を終えて
一昨日までG20が開催されていた。G20というが、実際にはメンバー国以外も招待をしているので、全部で27カ国と10の国際機関が来たという、日本ではこれまでで最大級の国際会議だった。
中にはこんなG20をやって意味があるのかという評論家もいるが、世界経済の大半を占める20カ国が集まり、いろいろな議論をし、どこに相違点や共通点があるのか確認し合う場面は、やはり大事だと思う。
米朝会談 ツイートから一時間で
G20が無事に終わったと思ったら、例のトランプ大統領のツイートから、いろいろなことが始まった。トランプ氏がツイートしたら、小一時間で北朝鮮側からレスポンスがあり、「それではやってみよう」という話だった。
夜、ポンペオ国務長官に「首脳会談をやることをいつ確信したのか」と聞いたら、「金正恩委員長が来るまで、我々も半信半疑だった。ずっと待っていたら、車列が来て、金正恩委員長が車から降りてきたので、会談をやるのだと思った」と言う。本当に瓢箪から駒というか、ツイッターから首脳会談である。
米朝プロセスは再開するが、北朝鮮の非核化も含め条件的には特に変わったことはない。北朝鮮に対する安保理決議に基づいた制裁は、かなりしっかり行われており、中国もロシアもそこはやることになっている。
ただ、いくつか抜け穴があり、一番大きいのは「瀬取り」で、安保理で定めた北朝鮮の原油輸入の上限を超える量が北朝鮮に入っている。これを何とか止めなければならない。
日本が中東地域で果たす役割
今、北朝鮮と並んで緊張が高まっているのが中東、特にイランの問題。
日本としてはイランがこれ以上、核兵器の開発につながらないようにすることが一番大きな問題で、JCPOA(包括的共同行動計画)というイランの核合意を支持している。
ところがアメリカは、イランが民生用の原子力発電をやりたいのであれば、濃縮ウランを買えばいい、自分で濃縮施設をつくる必要がないという立場だ。これに対しイランは、制裁されたら燃料が入らず、原子力発電所が動かせなくなるから、そこは自力でやる必要があるというので、この核合意を巡っていろいろな交渉が行われてきた。
イランからは安倍総理に来てほしいと言われていたので、訪問することになった。今回は私がまず先に着いて、ザリーフ外務大臣と外相会議を行い、その日の晩にロウハニ大統領との首脳会議、晩餐会、次の日に最高指導者のハメネイ師と会議、という日程だった。
ハメネイ氏、ロウハニ大統領、ザリーフ氏には若干の温度差はあるようだが、「核兵器を開発することはイスラムの教えに背くことになるから、我々はやらない」とロウハニ大統領もハメネイ最高指導者もはっきり言っていたので、核については心配はいらないと思う。
今まで日本は中東地域の多くの国に、親身になってODAを行ってきた歴史もあるので、もっと中東で大きな役割を果たせると思う。
アジアの民主化を日本が支援していく
また、G7の中で日本は唯一、アジアを代表して入っているが、去年も今年もG7の外務大臣会合で大きな話題になったのがミャンマーである。ミャンマーの西側、ラカイン州にかなりのイスラム教徒が住んでおり、その人たちが大量にバングラディシュ側に避難をしている。
去年はとにかく「国連の調査団を送り込め。それを共同声明に盛り込むんだ」と欧米側が言うのに対し、日本は「待ってくれ」という立場で、事務レベルでは決着がつかなかった。それで最後は大臣同士で話し合うことになり、欧米の代表は当時外務大臣だったポリスジョンソンで、私とひざ詰めで話をした。
そうして、ミャンマー政府が独立調査団をつくること、国連のUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)をはじめ、いくつかの組織と覚書を結び、国連組織をラカイン州に受け入れることになった。
今年もやはりミャンマーがG7の外務大臣会合で話題になり、私は「政権に寄り添いながら民主化を進めていこう」という議論をしてきた。アジアの民主化が後退しないように、一歩前に出ていくように、日本としてはやっていきたいと思う。
急務 霞が関の働き方改革
一つだけ将来的な話をすると、今、国際的な場で議論が始まっているのが、「LARs(致死性自律型ロボット)」である。ロボットに人工知能を載せる兵器の開発がいろいろな国で行われ、かなり発展してきている。しかし、人類共通の視点からみると、全く野放しで人工知能が暴走すると、人工知能対人間の戦いのようになり、取り返しがつかないことになるので、何等かの規制は必要であろう。
最後に、今、霞が関が危機的状況に瀕していることを知ってほしい。省庁訪問に来る学生の数が激減している。このままいくと霞が関はいつまで維持できるのか、というのが正直なところである。
国家の屋台骨を支える霞が関に、どのようにしてよい人材を集めるかは、国家の存亡にもかかわってくると思う。「霞が関の働き方改革」を真剣にやらなければ、霞が関はあっと言う間に崩れるのではないかという危機感を持っている。こういう問題に我々が直面していることを、ご理解いただきたい。
※講演全文は月刊『世界と日本』1302号に掲載されます。また、要約は週刊「世界と日本」NO.2155号に掲載されます。
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