内外ニュース懇談会 講演要約
講演
「今日の政治課題─参院選を前にして─」
衆議院議員、自由民主党選挙対策委員長
甘利 明 氏
内外ニュース東京懇談会4月例会は5日、ザ・キャピトルホテル東急で行われた。「今日の政治課題─参院選を前にして─」と題し、12年に一度の亥年選挙に対する意気込みから世界経済、データ駆動型社会、地方創生まで、熱く語った。
亥年選挙のトラウマを払拭
7月4日に参議院選挙がスタートする。統一地方選挙と参議院の半数改選が、12年に一度重なるという亥年選挙は、自民党にとってはある種のトラウマがある。12年前も、24年前も自民党は負けているからだ。
こういう悪いジンクス、トラウマを払拭し、地方選と国政選挙が重なる年は、「与党にとって躍進の年だ」という、新しいジンクスをつくっていかなければならない。そのために総理は、私をこの選挙の責任者に指名されたのだと思っている。
参院選が終わると、10月1日に消費税の引き上げがある。我々が一番気をつけて取り組んだのは、消費税引き上げに伴う景気変動が極力ないように、平準化策を取ったことである。前回5%から8%に引き上げた時は、駆け込み需要が相当あった。この駆け込み需要を減らすことが大切で、大型消費の自動車や住宅は、消費税引き上げの前後で消費者負担は変わらないということをアピールしている。
さらに10月1日から幼児教育の無償化がスタートする。こういう給付に関する予算措置を並べ、「10月1日からは負担が減るというメニューが並んでいる」ことを、国民に届けるために、平準化を図っていくことを第一に考えていかなければならない。
「日本の安定は世界の安定」を参院選で訴えていく
世界経済の状況で一般的に言われているのは、中国経済の失速と米中の貿易摩擦の深刻化だ。ただ中国は法人税の大幅減税と財政出動を行い、景気をしっかり底支えしていくという宣言をしている。
心配は米中の貿易摩擦だ。この間、トランプ大統領の最初の大統領首席補佐官のプリーバスさんが来日した時に話をした。その内容は米中の貿易摩擦と、デジタル覇権と私財盗用に対する制裁についてで、彼は表層的な貿易の課題は、短期間にディール(取引)ができるが、深層部分のデジタル覇権、先端技術覇権に対する攻防戦はずっと続くと解説した。
これは私が以前から言っていることと全く同じ見方で、トランプ大統領は大統領を見据え、ディールで解決する部分と、アメリカの競争力や安全保障にかかわる部分とを切り分けるのだと思う。
また、トランプ大統領の再選の可能性は非常に高くなってきている。大統領になった瞬間から、4年後に向けての政策を打っているため、現状では相当自分をセーブしている。しかし再選されれば、自分のやりたいことをやるモードに入っていくだろう。
そうすると、自由と民主主義と法の支配という価値観を共有するグループが、どうやって連携を保っていくかが問題になる。現状でもアメリカとEUは、従来の同盟グループとはかけ離れた景色になっている。G7の席上では、トランプ大統領とそれ以外の対決になり、その間に安倍総理が位置している。価値観を共有する陣営の結束を保つために、安倍総理の存在が今後大きくなることはあっても、小さくなることはないと思う。それは自公政権がどっしり安定しているからであり、安倍総理が続けているからである。
この「日本の安定は世界の安定」というフレーズで、参院選において自公で安定多数を取り、引き続き日本の政治は安定し、世界の安定に貢献できることを訴えていかなければならない。
データ駆動型社会の国際ルールが必要
世界の安定にとって、いくつかの不安要因がある。その最大の不安要因がデジタル覇権だ。
今年1月のダボス会議で、総理はデータのハンドリングをする、公正で透明な国際ルールが必要だと投げかけた。データは自由にフル活用するのが世界経済、国民にとって大事だが、そこには信頼性を伴っていなければならない。
そこでのキーワードは、「データ駆動型社会(data driven societyデータ ドリブン ソサイエティ) フォア ピープル」だ。データ駆動型社会というのは、ありとあらゆる生活活動や人間の行動、生活形態のデータ等を総合的に分析し、そこからAIなどを使い、新たな道を探り出す、意思決定や企画立案を最適化していくことである。
自由と民主主義と法の支配を共有の価値観とするチームがつくったルールが、世界のルールになるという攻防戦は、この2、3年で決まっていくと思われ、システムの浸透度合いに従い、どういうシステムをとっていくか、どちらの陣営のシステムが浸透していくかの競争になる。
そして私は、だいぶ前から国会リポートなどで「アメリカの最先端技術に関する製品の調達についてのサプライチェーンを、共有する価値観の国で完結しよう。」という、アメリカの動きが強烈に始まっていることを発信している。
地方創生と大学改革
最後に、今、アベノミクスにとって大事な、地方創生について話をしたい。安倍内閣ができた時から我々がやってきたことは、智の創造拠点と地域経済を、どのようにコラボレイトさせるかだ。その一番の目玉が大学改革である。
大学は基礎研究から応用研究、高度な教育を行う高度な知識産業である。学長や理事長は、その経営者であり、自分の知的資産をどうフル活用し、経営していくかという感覚をもたなければならない。
今までは、運営費交付金額の1%に傾斜配分をかけていたが、これを10%にする。そして、掲げる目標に向かい、運営から経営までしっかりマージメントしているかを査定していく。だから、自然科学系も人文科学系も関係ない。さらに単年度ではなく、最低5年間は既存の配分で、5年後にこれまでの5年間の努力を評価する。
アベノミクスはまだ道半ばだ。具体的なGDPや雇用者報酬、失業率などでは、圧倒的な改善をしてきている。あとは広く遍く、地域がそれぞれの特色を十二分に発揮し、よそに負けないという魅力を、どんどん引き出していくことだと思う。
「令和」について京都大学の山中先生が、「伝統とチャレンジング、この2つを併せ持っている、まさに日本の今までとこれからを象徴している元号です」と言われた。我が自民党も伝統の上に、「これぞ自民党だ」というブランディングをし、その下に地方議員から国政を預かる議員まで、英知を結束し、日本と世界のために貢献する政権であっていきたいと思っている。
※講演全文は月刊『世界と日本』1299・1300合併号に収録されます。また、要約は週刊「世界と日本」NO.2150号に掲載されます。
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