内外ニュース懇談会 講演要約
講演
「今年の政治課題」
衆議院議員 石破 茂 氏
内外ニュース東京懇談会1月例会は23日、ザ・キャピトルホテル東急で行われ、「今年の政治課題」と題し講演した。昭和、平成の時代を振り返り、何がどう変わったのかを検証し、令和時代の民主主義と憲法改正について熱く語った。また、国民に対する今後の政治の役割・基本姿勢を言及した。
昭和・平成を検証 令和を問う
令和2年の新春にあたり、昭和・平成の時代の検証をしておく必要がある。
私は昭和61年当選組で、閣僚も幹事長、政調会長もやらせてもらい、自分としては「できすぎの政治家人生だった」と思わないでもないが、この国の20年、50年、100年先を考えた時に、そんなことは言っていられない。できる限りの努力をして、有権者のお許しをいただければ、今しばらく議員として活動させてもらいたいと思っている。
昭和20年8月15日、敗戦を境に国民の価値観がガラッと変わり、まさしく激動の昭和だった。だから、昭和とは何であったかが、随分と論じられた。
しかし、平成から令和は、お祝いムードの中で時代が移ったので、「平成とは何であったのか」という議論があまり行われていない。そこをきちんと検証して、令和の時代を我々日本人は生きていくべきだと考えている。
平成というのは、1つは間違いなく戦後が終わった時代である。
田中角栄氏が「戦争に行った者が世の中の中心にいるうちは大丈夫だ。戦争を全く知らない者ばかりの時代になった時は怖い。だからよく勉強してもらわなければならない」と、語っておられた。
今、私も含めて、戦争を知らない者がほとんどになった。なぜ日本は開戦したのか、なぜ途中でやめることができなかったのか、悲惨な敗戦を迎えたのかをきちんと検証しておかないと、もう一度同じことが起こりかねない。
もう1つ、平成の間にあるべき資本主義の姿が、相当に変質を遂げた。金利はほとんどゼロで、お金に価値がつかない。これでは市場原理が働かない。日本の企業は生産性を上げて利益を出すよりも、コストカット型の経営が多かった。また株主偏重にもなっていないか。このような、誰かにしわ寄せがいくような経済は、決して強くない。
民主主義も相当の変質を遂げた
平成の間に民主主義も相当に変質を遂げた。民主主義がきちんと機能するためには、3つの条件がある。
1つ目は投票の問題。参加する権利を持った人が、できるだけ多く参加しないと機能しないが、投票率はどんどん下がっている。投票というのは権利であるが、同時に義務でもある。
2つ目は言論。健全な言論がなければ、民主主義は機能しない。最近は多くの方々が新聞もテレビも見ず、スマホで自分の好みの情報だけに接している。そこに本当に健全な言論があるのだろうか。
3つ目は少数意見の尊重。これがないと、民主主義は成り立たない。我々がなぜ政権与党なのかといえば、選挙で多数を得たからだ。予算案や法律案は、よほどのことがない限り通すことができる。
しかし、かつて自民党の国対関係の先輩方に、「対決法案において、野党に賛成してもらうことは無理でも、納得してもらう努力をせよ」と教わった。野党の議員の後ろにも国民がいる。いかに納得してもらうかが大切だ。
戦後が終わり、資本主義が変質を遂げ、民主主義が変質を遂げた。それが平成の総括だとするなら、今の令和にふさわしいあり方を取り戻していかなければならない。
私どもが国民からいただいた任期は、来年の10月までだ。我々は「国難を突破するための解散」をして、この議席をいただいた。その国難は今どのようになっているか、それに対して我々は何をなすべきか、この国会できちんと議論しなければならない。
国難の第一は、人口減少
国難の第1は、人口減少である。今、1年に45万人ずつ減っている。このままいくと、20年後の2040年には、高齢者の比率はピークになり、介護にかかるお金は2.4倍、医療は1.7倍、年金は1.3倍になる。人口は1500万人減って、どうやって社会、介護、医療を維持するのか。
出生率が高い地方が滅んで、食料、エネルギーを作らず、出生率断トツ最低の東京だけが残る日本というのは、国家とは言えない。サスティナブル(持続可能)ではない。
昭和30年から45年までのたった15年間に、日本のあらゆる地方から首都圏に3000万人が移り住んでいる。
昭和の時代から平成にかけて、首都一極集中を人為的に作ってきた。それは短期的には効果があり、日本は高度経済成長を遂げた。しかし今、それをいかにして変えていくか、一極集中を止めるかは、国をあげて考え、政府が最初に取り組まなければならない。
憲法改正は大事であるが、私はこの国を本当の意味での独立主権国家にするための憲法改正が必要だと思っている。
日本国憲法第9条を聞いて、何のことだかわかる人が一体どのくらいいるのか。1項はしっかり解説をすればわかるだろう。しかし、「国際紛争」という概念はどのように整理し、「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」を、どのように説明するのか。「国家と軍隊の本質」をきちんと議論しなければならない。
結局、政治は国民を信じているのか、ということが問われている。「どうせ言ってもわからない」、「難しすぎるよ」と言って、国民を信じていないのではないか。正面から国民に誠心誠意語れば、日本人は必ず反応してくれるはずだ。少なくともそれを語らなければならない時代が来ている。政治は何の役割を果たすべきなのかを、私どもは皆様と一緒に考え、実現したいと思う。
外交についても同じである。私たちは、どれだけ相手のことを知ろうという努力をしてきただろうか。内政も外交も非常に厳しい中にあって、この令和の時代、我々自由民主党、その一員として、可能な限りの努力をしないと、国家に対し、次の時代に対して、大変申し訳ないと思っている。
※講演の動画は「内外ニュースチャンネル」でご覧頂けます。(会員専用)
https://www.naigainews.jp/懇談会/懇談会動画/動画-石破氏202001-会員専用/
講演全文は月刊『世界と日本』1309号に掲載されます。また、要約は週刊「世界と日本」NO.2168号に掲載されます。
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