内外ニュース懇談会 講演要約
講演
安倍首相の目指す政治
内閣官房長官 菅 義偉 氏
2014年4月に開催した東京懇談会で「安倍首相の目指す政治」と題し、政権運営に取り組む姿勢および課題を、静かな口調ながら熱く語った。(講演要旨は次の通り)
《菅 義偉氏講演のポイント》
『百の言葉より一つの結果を』
早いもので、政権発足してから1年と4カ月。全大臣が1人も欠けることなく、政権運営をしていることは戦後初めてだそうで、5月の9日には500日を迎える。
政権発足と同時に総理は、日本経済再生、東日本大震災からの復興、危機管理の徹底、この3本柱を中心に政権運営をして行こうと全閣僚に指示した。
『日本経済再生に全力で取り組む』
経済が強くなければ、社会保障の充実、外交、安全保障などへの対応、また財政の再建もできない。アベノミクスと言われる3本の矢を一体的に放って、今、日本経済再生に全力で取り組んでいる。
この1年と4カ月、経済は、大きく変わったのではないだろうか。GDPが、私たちの前の政権では2四半期連続マイナス、私たちが引き継いでからは5四半期連続のプラスになった。
円も102円前後。8000円台だった株価も、今、1万5000円前後。有効求人倍率も0.8だったのが、今、1.05まで回復した。就職したい人が就職できる状況まで、ようやくなった。結果として、まさに日本を代表する自動車、電機、機械、こうした輸出産業に余裕が出始めてきた。大きく変わったと思っている。
とはいえ、このアベノミクスの恩恵を受けているのは大都会だけ、大企業だけじゃないか。地方や中小企業はまだまだ景気のそうした波が来ていないと。こうも実は批判されているが私は、それは当たらないと思っている。
昨年暮れの日銀短観によって、北海道から九州までの全国7つの地域で、すべて増益ということが発表された。これは7年ぶりだそうだ。同じく日銀の短観では、中小企業において製造業は6年ぶり、非製造業においては21年10カ月ぶりに景況感がプラスになったと。間違いなく回復基調であることを数字は示している。
そして何よりも、国民の皆さんにとって大事な老後を支える年金の公的年金運用益を、私たちは政権の座に就いてから約24兆円確保することができた。
こうした方向性、私たちの目指したことがようやく今、動き始めた。私たちは自信を持って、この道を進めていきたいと思っている。
『3本目の矢の一番はTPP成長』
1本目の矢と2本目の矢は良かったが、3本目の矢はまだまだだ、全くみえないと言われるが、もともとは中長期の矢だ。3本目の矢で一番重要なものは、TPP(環太平洋経済連携協定)による成長だと、私は申し上げている。
それは高くて、遠くて、滞空時間が長い。しかし、私たちは主張すべき点はしっかりと主張し、かつてのように簡単には妥協しない。予断は許さないが、オバマ大統領が訪日するからといって、そこまでの間に決着するとかではなくて、まさにわが国の国益をかけて、ギリギリの交渉を行うということだ。
農業改革も大きな前進があったのではないか。昨年、四十数年ぶりに(コメの)生産調整の見直しをし、減反政策を5年間かけて廃止する方向を打ち出した。また、県が中心となって大規模に農地を集約して、「攻めの農業」のまさに基盤をつくっていこうと・・・。
3本目の矢の中で、よく言われているのが法人税の引き下げ、あるいはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用の見直し、さらには女性が働く環境の整備。輝く女性の社会を私たちはつくろうとしている。
『これからの国会』
最後に、これからの国会について少し触れさせていただきたい。
ここにきて、ようやくデフレから脱却できる環境整備をすることができた。同時に、財政再建もやらなければならない大事な仕事だ。しかし、4月1日からの消費税の引き上げで、景気が腰折れしたら元も子もなくなってしまう。
昨年の10月に消費税を発表した時に、1兆円規模の減税と5兆円を超える経済対策を行うことを同時に発表。そのパッケージは今度の補正予算と本予算の中に組み込んでいるので、前倒し執行で、何とか腰折れは防ぐことができるだろうと。消費税の激震を最小限に抑えて、予定する経済成長の軌道に乗せたいと思う。
オバマ大統領が、明日23日、日本に来て、日米の首脳会談が行われる。この会談は極めて有意義なものに、日米にとって歴史的意義のものにするように、私たち今、全力で取り組んでいるところだ。
集団的自衛権の問題だが・・・。例えば中国はこの10年間で軍事費は4倍に、そして非常に不透明だ。一方私たち日本は、この10年間での防衛費はマイナスだ。安倍政権になって、今年の防衛費は0.8%しか実質伸びていない。
しかし私たちは、防衛費を今の日本の財政状況の中で一挙に拡大していく方向は取らない。日米同盟をしっかりと強化することで、わが国を取り巻く安全保障環境が極めて厳しくなった時に、対応していきたい。
また北朝鮮はミサイル発射、あるいは核実験をするとの報道もされているが、そういう中で国民の皆さんの生命と財産、そして国の安全を、今のままで本当に守ることができるのかどうか、私たちは今、この集団的自衛権を考える必要があると思っているところだ。
私たちの政権は「百の言葉よりも一つの結果を」と。まさに約束したことは時間がかかっても、1つ1つ必ず実行に移していく。そういう思いで総理を中心に私たち、全力で取り組んでいるところだ。ありがとうございました。
※全文は月刊『世界と日本』第1241号に収録されます。また、要約は週刊「世界と日本」2029号に掲載されています。
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