内外ニュース懇談会 講演要約
講演「外交・安全保障政策の課題」
衆議院議員 長島 昭久 氏
2013年10月に開催した東京懇談会で「外交・安全保障政策の課題」と題して講演し、日本がかかえている安全保障と平和の問題点について縦横に語った。
《長島昭久氏講演のポイント》
今、PKOで行っている陸上自衛隊の部隊が、向こうで活動しているシビリアン(文民)、例えば国連の職員とか、日本のNGO、あるいは外務省の職員とかが、ゲリラなどに捕らわれ、「助けて下さい」とSOSがあったとき、どうするか。
自衛隊を送っていても、実は文民を守れない。それが、日本国憲法第9条で禁じられた国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇行使に当たるからだという。あまりにも抑制されすぎている解釈ではないか。
しかし、野田政権で「武器輸出三原則」の緩和措置の風穴を開けることができたし、「防衛計画の大綱」の見直しもしている。野田政権が誕生したとき、まず東アジア共同体という考え方はとらないと表明し、鳩山(由紀夫)政権が打ち出した構想を否定した。
アジアで、アメリカ抜きの秩序を作ろうとすれば当然、日本よりも、台頭著しい中国を中心とする秩序になりかねない。中国の台頭をいかに捉えるか、これにどう対応するかは、実は日本にとっても、アメリカにとっても、国際社会全体にとっても最大の課題である。
一時、野田総理は「太平洋憲章」(参考:大西洋憲章)みたいなものを発表したい意向を持っていた。それは、3つの柱から成り立っている。1つ目の柱は経済。投資や貿易の新しいルールをつくっていく。まずはTPPを成立させる。参加国をアジア・太平洋全域に広げる。2つ目は安全保障。南シナ海、東シナ海をにらんで、アジア・太平洋における海のルールづくりをきちっとやる。中国は、国際的なルールというよりは、2国間の歴史的な関係、力関係で紛争を解決していこうとしている。今、ASEANで、コード・オブ・コンダクト(行動規範)、非常に法的な拘束力の高い海の紛争解決のルール、あるいは航行の安全を守るルールを作っている。3つ目は資源・エネルギーの安定供給ためのルール作り。
今、原発を再稼働できないことによって、カタールを中心とするLNGの輸入が、膨大に何兆円という規模で膨らんできている。そういう中で、ロシアが接近してきている。オーストラリアやアメリカを中心とするカナダ、北米におけるシェールガス革命もある。
中東も含めてアジアで調達するコストの5分の1ぐらいだが、輸送のコストとかLNGの基地を作るコストなども入れても2分の1、3分の1ぐらいとなる。日本は、世界第6位の排他的経済水域のエリアを持っている。南鳥島の沿岸には、地下5000メートルという非常に深いところに、220年分の日本で需要のあるレアアースが眠っていると発見された。あるいは日本の周りにはメタンハイドレートも、天然ガス百数十年分と言われ、排他的経済水域内に、コバルトリッチクラストとか、熱水鉱床、金属、あるいは鉱物資源が大量に眠っていることが分かってきた。
中国と韓国に関しては、慌てふためいて関係改善を急ぐ必要はない。でも、韓国との関係は、対中戦略を地政学的に考えたとき、朝鮮半島の安定化、北朝鮮の脅威の封じ込めがあり、経済的にも、安全保障上も、1日も早く改善すべきだと思っている。
これまで何度も謝罪をした。1965年に日韓基本条約で、両国合意のうえで宣言もしている。にもかかわらず、いつまでも繰り返し主張されたら、前に足を踏み出すことができなくなる。
尖閣でも、石原都知事の発言があるはるか前から、中国側は尖閣周辺に物理的な圧力を加えてきた。特に2008年以降は、しばしば領海侵犯を繰り返してきた。
中国は従来、台湾、チベット、新疆ウイグルに対して「核心的利益」という言葉を使ってきた。去年の1月、共産党の機関紙である「人民日報」の社説で、初めて尖閣諸島が南シナ海と並んで「核心的利益」となった。ベトナム戦争が終結し、アメリカが撤退して力の空白が生まれたところに、中国は入っていくパターンがずっと続いてきている。
南シナ海は今、ベトナムやフィリピンとの間で、かなり衝突を繰り返している。それがいよいよ東シナ海で起こりつつある。
安倍政権が課題としているNSC(国家安全保障会議)の創設は、官邸の中に司令塔をつくることだ。
もう1つは秘密保護法制。今まで公務員は秘密を漏らすと1年の懲役、防衛秘密は5年、日米の間の秘密については10年だった。今回、国家の安全保障に関わる秘密事項について漏洩した場合には10年となる。
そして3つ目が集団的自衛権の問題である。具体的には、公海上で例えば一緒に活動しているアメリカが攻撃を受けた場合、日本はどうするか、それから他国の領域の中での武力行使がしうるのかの2つの問題に絞られる。
他国の領域での武力行使は、現行憲法下では難しい。憲法に抵触する。ただし、公海上における日米の海上の協力、共同のパトロールは、日本の余力が許す限り実施する。
今、海賊対策で護衛艦が2隻行っている。相手が海賊ならば武器を使用しても、憲法で禁じられた国際紛争を解決するための武力行使に当たらない、という法制局解釈がある。
では、日本とアメリカが一緒にパトロールをしていたとき、何か攻撃を加えられた場合、どう対処するのか。
今の日米同盟関係は、基本的には日本の領域においては、日米対等で、有事のリスクはアメリカ、平時のコストは日本とバランスの中で成り立っている。
外交や安全保障で大事なのは国益であり、私たちは野党としても責任の分担、共有をきちっと政府と図りながら責任ある外交・安保政策の主張をしていきたい。
※全文は月刊『世界と日本』1235号に掲載されます。また、要約は週刊「世界と日本」に掲載されています。
コメントをお寄せください。
※管理者が著しく不利益と判断する記事や他人を誹謗中傷するコメントは、予告なく削除することがあります。
コメントをお書きください