内外ニュース懇談会 講演要約
講演「最近の内外情勢」
衆議院議員 自由民主党副総裁 元外務大臣 高村 正彦 氏
2013年4月に開催した東京懇談会で「最近の内外情勢」と題して講演。日米関係や憲法改正問題などに関して識見を披露し、好評を博した。
《高村正彦氏講演のポイント》
(1)民主党政権下で、鳩山総理の普天間基地の「最低でも県外移転」発言などもあって、日米同盟が脆弱化した。
そこでメドベージェフ・ロシア大統領の国後島不法上陸、李明博・韓国大統領の竹島不法上陸、そして日本が実効支配している尖閣への中国の挑戦など、今までなかったようなことが起こってきた。
(2)普天間移設も、安倍総理が、自らオバマ大統領に対して強く働きかけ、また嘉手納以南の基地返還のタイムスケジュールも求めた。
普天間固定化だけは絶対避けるという強い意志を持って、まず漁業協同組合との交渉が妥結できた時点で、直ちに埋め立て許可申請を沖縄県に対して行った。
普天間基地が辺野古に移ることによって、沖縄県民の負担が相当程度減る。これは客観的な事実である。しかし、必ずしも納得していない県民の方がいらっしゃるのも、また客観的な事実である。だから、納得していただけるよう、理解していただけるよう、最大の努力をこれからもしていく。
(3)日米同盟の日本側の義務は、アメリカに基地を提供することだ。アメリカ側の義務は、いざというとき、アメリカの青年の血を流してでも日本を守る。
これがお互いの義務であるが、条約上の義務だけやっていれば日米同盟はうまくいくかというと、必ずしもそうではない。
もし、北朝鮮がミサイルを飛ばして、アメリカ本土もしくはグアムの基地を狙った。そういうとき、日本がそれを撃ち落とす能力を持っていたにもかかわらず、アメリカに行くのだから撃てないと言ってやめ、アメリカ本土なりグアムの基地が大打撃を受けたとしたなら、日米同盟はそこで終わりとなる。アメリカは世論の国ですから、それを許さない。
(4)今の日本の抑止力は最低にみても、90%以上アメリカの打撃力によって成り立っている。日本の自衛隊は専守防衛である。相手に打撃を与える力がないと、大きな抑止力とならない。
日本国憲法9条第2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と書かれている。主権国家である以上、自分を守らない、自らの生存権の否定はありえないこと。だから必要最小限度の自衛はできる。これが内閣法制局の解釈で、自然権として必要最小限度の自衛はできるとなる。
では、必要最小限度とは何か。
ここから内閣法制局は間違えた。必要最小限度 ― 自分を守るためだから、自分が攻められたとき、守るのはいい。個別的自衛権は許される。集団的自衛権、ひとが攻められるのを守るのは必要最小限度ではないから駄目、と解釈した。内閣法制局は法律の専門家であっても、安全保障の専門家ではない。だから、ひとが攻められたとき守ってあげるのも、日本を守るための必要最小限度であると気がつかなかった。
(5)集団的自衛権の類型の中にも、日本を守るための必要最小限度のものがあったなら、集団的自衛権の行使はできる、と解釈すべきである。これは解釈改憲にはあたらない。
「前項の目的を達するため」があるから、自衛戦争であればいいと解釈する人もいる。
これは「芦田修正」と言われているが、自民党の中は、私の解釈にほぼ統一されつつある。それなら、9条について憲法改正する必要はないではないかと言う人もいる。しかし、そうはいかない。
言葉通りならできないけれども、自然権的にはやってもいいというのは、みっともないではないか。
だから憲法9条2項は削除する。1項はパリ不戦条約以来、あるいは国連憲章にも掲げられていることだから堅持する。そして自衛隊の存在を明記する。
(6)自衛隊という名前は、日本だけで使っている特殊な名前で、やっぱり国際的に通用する「軍」としたほうがいい。その場合、自衛軍か国防軍か。自民党内に多数説は「国防軍」であった。それを決めたときの自民党総裁は谷垣禎一さんである。
(7)それに96条問題がある。占領下に作られた憲法で、極めて改正規定が難しい。衆参とも3分の2がないと発議すらできず、国民の意見も聴けない。
自衛隊を人道支援でイラクに派遣するとき、私は衆院イラク特別委の委員長で、イラクを視察した。アメリカのサンチェス司令官は、同盟国であるアメリカがイラクで戦っているのに、日本が人道支援だけはおかしいという。
そこで、それはアメリカの占領下で作った憲法で、戦うために自衛隊を派遣することはできないと答えた。
そうしたら彼は、占領下なんて、もう大昔の話ではないか。独立して何年たっているんだ。憲法改正して送ればいいではないか、と言う。
私も、改正なんて、簡単に言わないでくれ。衆参ともそれぞれ3分の2以上の多数なんて、自民党が一党支配と言われた時代でも、1度もなかった。
いずれにしても、憲法96条は、もっと改正しやすい規定に直すべきだと思っている。
※全文は月刊『世界と日本』に収録されます。また、要約は週刊「世界と日本」1998号に掲載されています。
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